古民家の漆喰塗り。高知石灰工業の「白亜」がお気に入り


久しぶりの漆喰塗り。お借りしている古民家は、自由にリフォームしてもいいと大家さんが言ってくれているので、壁を一枚ずつ漆喰で塗り直している。

漆喰というと、「自然素材」というイメージがあるけれど、化学接着剤が使われていたり、つなぎにビニールやナイロンなどの化学繊維が使われていることが多いらしい。

いろいろな製品があるので、どれを使おうかずいぶん悩んだ結果、高知石灰工業の「白亜」という漆喰が気に入ってずっと使っている。この製品の成分は、高知産の消石灰のほか、大理石粉、麻すさ、海藻のり、植物性のり。日本漆喰協会自主認定制度に合格していて、この合格認定は、世界的に見ても非常に厳しい化学物質放散基準をクリアーした漆喰製品のみに与えられるらしい。

値段も買いやすく、20kgで3,400円。





トロ船に水を入れ、漆喰を何回かに分けて加えて練っていく。最初の頃は、竹のターナー(料理用)で混ぜていたが、大変すぎたので、「練り鍬」というものを購入し、これのおかげでだいぶラクになった。


刃の部分が四角くなっていて、トロ船の隅の方までかき混ぜやすくなっている。


麻すさがけっこう塊になって入っているので、よく混ぜ合わせておく必要がある。よく練ったあとは、一晩そのまま置いておくと(「練り置き」というらしい)、各成分が均一化されて塗りやすくなるらしい。一晩で水分がある程度減るので、水分を少し多めに混ぜておくと翌日作業しやすいが、多すぎると、ほどよい水分になるまで数日待つことになる(当日に漆喰を加えてもいいのだけど)。


漆喰を壁に塗る前の下準備として、塗る面の周囲に養生テープを貼っておく。漆喰を塗る厚さを考慮して、貼る位置を決めるのだけど、やっているうちに感覚がつかめる。壁ぎりぎりに貼り過ぎると、漆喰を塗ってテープをはがすときに、漆喰も一緒に取り過ぎてしまうし、壁から離れすぎると、端のラインがきれいに出ない。


愛用の鏝(こて)と鏝板。


トロ船から鏝板に漆喰を移す際、最初の頃は、漆喰をかき混ぜる料理用ターナーを使っていたが、時々落としてしまうことがあり、上の写真の道具を使うようになった。

霧吹きで壁を濡らしたあと、いよいよ漆喰塗りの開始。


下から上へと塗っていく。

通常、土壁に漆喰を塗るときは、土壁の上に中塗り(砂漆喰)をするらしいけれど、うちでは、剥がれかかった壁の上からそのまま塗っている。簡単に剥がれ落ちてくる壁の場合、漆喰を塗っているとボロボロと剥がれてきて苦労する。剥がれてこないようにするスプレーなどもあるようだけど、化学物質は極力使いたくないので、何とかそのまま塗る。


壁の具合によっては、塗り終えた漆喰がある程度乾燥した頃に、壁土の上にもともと塗られた素材と一緒にべろっと剥がれてきて、大量の漆喰が無駄になってしまったこともあった。そういうことは避けたいので、ちょっと塗ってみて、上塗りが不可能だと判断した場合は、元の壁を剥がすようにしている(今回はそのままでいけた)。


剥がれてきやすい壁の上から塗る場合、一通りざっと塗ったあと、ある程度乾燥した上からもう一度薄く塗って表面を整える。


塗り終えたらマスキングテープを剥がして、この壁は完成!



漆喰の壁は、何とも気持ちがいい。漆喰は多孔質、つまり孔(あな)がたくさんある素材なので常に呼吸し、有害な化学物質などを吸着・分解してくれて室内を清浄に保ってくれるらしい。断熱性もあって、室内の涼しさや温かさも保ってくれるらしく、それに防火性、抗菌性などもあり、いろいろといいこと尽くめ。

一見真っ白だけど、蛍光灯の下で見るのと、太陽光で見るのとで色が変化し、時間帯によっても色が変化し、手で塗っているので一様でない細かい凹凸や模様があり、見飽きることがない。自分で苦労して塗った漆喰壁を見ているとうれしくなる。家の中で塗りたい壁はまだまだ何枚も残っている。


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by 硲 允(about me)
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