学生の頃から納豆が好きで、実家で暮らしていた頃は、1日に3パック以上食べるときもあった。今思うと不思議なことに、毎日納豆を食べながら、それがどうやってつくられるものなのかをほとんど考えたことがなかった。納豆は工場でつくられるものだとしか思っていなかったが、もともとは、工場でつくられていたわけではない。納豆菌の純粋培養法が開発され、純粋培養された菌で製造されるようになったのは1930年代らしい。伝統的な納豆のつくり方というのは、蒸した大豆を稲の藁苞(わらづと)で包んで保温しておくとくもので、藁についた菌によって大豆を発酵させていた。
東京で暮らしていた頃、「ナチュラルハーモニー」という自然食品店で、藁苞でつくった納豆を買ったことがある(藁に包まれたまま販売されていた)。純粋培養の菌をつかった納豆とは異なり、味に深みと複雑さがあり、これが本来の納豆か、と感慨深かった。値段が高いので一度しか食べていないけれど、その味は今でも覚えている。
お米を育てるようになり、その稲わらを使って自分で納豆をつくってみたいと前々から思っていて、ようやく実行した。
藁苞(わらづと)のつくり方は、ネットで調べたら簡単にできそうだった。藁を束にして(「はかま」を取り除く人もいれば、そのままにする人もいる)、真ん中を藁や麻紐で結ぶ。
穂の方を、結び目のところで少しずつ折り返していく。
全部折り返したら、折り返した穂先が収まるくらいのところで結ぶ。
余分なところをハサミで切り落として完成!
束の太さや、折り返す位置は、いくつかつくっているとちょうどいい具合がわかってくる。4個つくった。
藁の間に指をごそごそと入れて、納豆が入る隙間を開ける。
中に入れたのは小豆ではなく、「黒千石大豆」(柔らかくなるまで茹でてある)。黒千石大豆は栽培が難しいらしく、1970年代に生産されなくなり、「幻の黒千石」と呼ばれて絶滅したとされていたらしい。ところが、2001年に、北海道の農業研究家である田中淳氏によって黒千石の原種が発見され、28粒の発芽に成功したとのこと。その後、岩手で研究者の指導のもと栽培され、2004年に故郷の北海道でも育てられるようになった、という復活ストーリーがある。
藁苞に入りきらなかったので、タッパーの底に藁を敷いてその上に黒千石を乗せた。
この後、40度前後で12~24時間くらい保温するらしい。設定した温度で保温できる機械もあるようだけど、うちでは湯たんぽを使うことにした。
発泡スチロールの箱にタッパーや藁苞を入れ、さらに段ボール箱に入れる。上にタオルを敷いて湯たんぽを乗せ、毛布などで保温し、コープ自然派の宅配で使用しているアルミの保温カバーを拝借。
寒い日が続き、これだけ保温していても湯たんぽの温度がすぐに下がってしまうので、数時間ごとにお湯を温め直した。
12時間経った頃には、大豆の表面が白くなってきて、納豆菌が活発になりつつある傾向が見えた。ただ、乾燥しすぎな感じで、干し納豆のようになってきていた。
24時間を過ぎても、その状態からあまり変化する様子が見えないので、藁苞から出して食べてみることにした。
ワクワク…
見た目は納豆っぽい。時々糸を引くが、粘り気がどうも足らない…
藁の欠片が一緒に入ってしまうので、取り除く必要あり(藁苞をつくるときに「はかま」を取り除いておけば、納豆に混ざってしまう藁の欠片を減らせそう)。
醤油をかけてかき混ぜ、食べてみると、ねばねばしないが、風味は納豆だった! 前に食べた、藁苞でつくられた納豆に近い味。
おそらく、乾燥し過ぎなのが問題なのだろう。納豆をつくるには、適度な湿気が必要らしく、ネットで調べていると、藁苞をビニール袋に入れてから保温する方もいた。寒い日に湯たんぽ一つなので、温度も十分に上がらなかったようだ。
稲を収穫してしばらく経つ藁なので、ところどころ、カビが生えていた。藁苞のカビが生えたところに近い大豆には、納豆菌には見えない白や緑のカビが生えていた。白も緑も、一通り全部味見してみた。緑色のカビは、舌先がちょっとぴりっとした。お腹がちょっとびっくりしたようで不穏な動きをし始めたが、お腹を壊すようなことはなかった。
箱の一番下に置いてあったタッパーには、上に置いていた湯たんぽの熱が一番伝わりづらく、納豆菌がほとんど大豆に作用してなさそうだった。
今回は納豆菌以外がいろいろと活発になってる様子なので、念のため火を通したほうがよさそうだと思い、納豆汁にすることにした。
保温環境が整っていないのに、いきなり藁苞でたくさんつくろうとし過ぎたのが失敗のもとだった。タッパー一つで、しっかり保温して湿度も保てば上手くいったかもしれない。
味噌づくり用に煮ていた大豆を使って、さっそく再チャレンジ! 今度は白い大豆で…
<つづく>
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by 硲 允(about me)
twitter (@HazamaMakoto)
東京で暮らしていた頃、「ナチュラルハーモニー」という自然食品店で、藁苞でつくった納豆を買ったことがある(藁に包まれたまま販売されていた)。純粋培養の菌をつかった納豆とは異なり、味に深みと複雑さがあり、これが本来の納豆か、と感慨深かった。値段が高いので一度しか食べていないけれど、その味は今でも覚えている。
お米を育てるようになり、その稲わらを使って自分で納豆をつくってみたいと前々から思っていて、ようやく実行した。
藁苞(わらづと)のつくり方は、ネットで調べたら簡単にできそうだった。藁を束にして(「はかま」を取り除く人もいれば、そのままにする人もいる)、真ん中を藁や麻紐で結ぶ。
穂の方を、結び目のところで少しずつ折り返していく。
全部折り返したら、折り返した穂先が収まるくらいのところで結ぶ。
余分なところをハサミで切り落として完成!
束の太さや、折り返す位置は、いくつかつくっているとちょうどいい具合がわかってくる。4個つくった。
藁の間に指をごそごそと入れて、納豆が入る隙間を開ける。
中に入れたのは小豆ではなく、「黒千石大豆」(柔らかくなるまで茹でてある)。黒千石大豆は栽培が難しいらしく、1970年代に生産されなくなり、「幻の黒千石」と呼ばれて絶滅したとされていたらしい。ところが、2001年に、北海道の農業研究家である田中淳氏によって黒千石の原種が発見され、28粒の発芽に成功したとのこと。その後、岩手で研究者の指導のもと栽培され、2004年に故郷の北海道でも育てられるようになった、という復活ストーリーがある。
藁苞に入りきらなかったので、タッパーの底に藁を敷いてその上に黒千石を乗せた。
この後、40度前後で12~24時間くらい保温するらしい。設定した温度で保温できる機械もあるようだけど、うちでは湯たんぽを使うことにした。
発泡スチロールの箱にタッパーや藁苞を入れ、さらに段ボール箱に入れる。上にタオルを敷いて湯たんぽを乗せ、毛布などで保温し、コープ自然派の宅配で使用しているアルミの保温カバーを拝借。
寒い日が続き、これだけ保温していても湯たんぽの温度がすぐに下がってしまうので、数時間ごとにお湯を温め直した。
12時間経った頃には、大豆の表面が白くなってきて、納豆菌が活発になりつつある傾向が見えた。ただ、乾燥しすぎな感じで、干し納豆のようになってきていた。
24時間を過ぎても、その状態からあまり変化する様子が見えないので、藁苞から出して食べてみることにした。
ワクワク…
見た目は納豆っぽい。時々糸を引くが、粘り気がどうも足らない…
藁の欠片が一緒に入ってしまうので、取り除く必要あり(藁苞をつくるときに「はかま」を取り除いておけば、納豆に混ざってしまう藁の欠片を減らせそう)。
醤油をかけてかき混ぜ、食べてみると、ねばねばしないが、風味は納豆だった! 前に食べた、藁苞でつくられた納豆に近い味。
おそらく、乾燥し過ぎなのが問題なのだろう。納豆をつくるには、適度な湿気が必要らしく、ネットで調べていると、藁苞をビニール袋に入れてから保温する方もいた。寒い日に湯たんぽ一つなので、温度も十分に上がらなかったようだ。
稲を収穫してしばらく経つ藁なので、ところどころ、カビが生えていた。藁苞のカビが生えたところに近い大豆には、納豆菌には見えない白や緑のカビが生えていた。白も緑も、一通り全部味見してみた。緑色のカビは、舌先がちょっとぴりっとした。お腹がちょっとびっくりしたようで不穏な動きをし始めたが、お腹を壊すようなことはなかった。
箱の一番下に置いてあったタッパーには、上に置いていた湯たんぽの熱が一番伝わりづらく、納豆菌がほとんど大豆に作用してなさそうだった。
今回は納豆菌以外がいろいろと活発になってる様子なので、念のため火を通したほうがよさそうだと思い、納豆汁にすることにした。
保温環境が整っていないのに、いきなり藁苞でたくさんつくろうとし過ぎたのが失敗のもとだった。タッパー一つで、しっかり保温して湿度も保てば上手くいったかもしれない。
味噌づくり用に煮ていた大豆を使って、さっそく再チャレンジ! 今度は白い大豆で…
<つづく>
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