ドイツ人医師のベルツ氏と、玄米おにぎりで脅威のスタミナを保っていた車夫の話。「肉を食べないとパワーが出ない」はウソ?



『「食事」を正せば、病気、不調知らずのからだになれる ふるさと村のからだを整える「食養術」』(秋山龍三、草野かおる 著)という本で、明治時代の車夫が玄米おにぎりと梅干し、漬け物だけの食事で脅威のスタミナを維持していた、というエピソードが紹介されていた。

明治時代、日本の近代化と西洋化をはかるため、明治政府は西欧諸国から多くの「お雇い外国人」を招いたそうな。その一人が、現東京大学医学部で教鞭をとり、のちに宮内省侍医を務めたドイツ人の医師、ルウィン・フォン・ベルツ氏。

ベルツ氏が東京から日光に移動した際、最初は馬を6回乗り換えて移動したが、別のとき、人間の車夫が途中で交代することなくたった一人で14時間かけてベルツ氏を運んだという。

その車夫が何を食べているかというと、玄米おむすびと漬け物と梅干しのみ。ベルツ氏は驚き、肉を食べさせたらもっとパワーが出るのではないかと思って実験したところ、車夫たちは疲労困憊して走れなくなってしまったそうな(元の食事に戻すと、再び走れるようになった)。

この実験により、ベルツ氏は、西洋の栄養学が日本人にそのままあてはまるわけではなく、日本人には日本食がよいことを確信したとのこと。

詳しいことは、どうやら「ベルツの日記」という本に載っているらしい。



ぼくも20代前半頃までは肉ばかり食べていたけれど、今思うと常に、疲労困憊して走れなくなった車夫のような状態だった。なるべく軽いノートパソコンをリュックに背負い、ちょっと坂道を歩くだけで疲れていた。旅行に行っても、宿まで着くと疲れ切り、歩き回る元気が残っていなくてベッドに倒れ込むような始末だった。

そんな状態だったのに、菜食中心で化学物質を避ける食事に切り替えてから、だんだんと体力が回復し、一日に何時間もかけて自転車で移動しても平気になった。

上の本では、日本人と欧米人は腸の長さが違う、という話も紹介されている。欧米人のほうが腸が短いらしい。肉を食べてきた歴史が短い日本人は、消化に時間のかかる肉類や動物性タンパク質の消化に慣れていないし、肉類に含まれるたんぱく質や脂質は、腸内で腐敗・酸毒化しやすく、長い腸に老廃物が長時間とどまり、血液を汚し、細胞や組織を劣化させていろんな病気を発症させることになる、とのこと。

肉食についてはいろんな説があるし、腸の長さにしても、日本人と欧米人で大して変わらないとか、個人差にもよる、という話もあり、簡単には決着しない話だけど、一番わかりやすいのは、自分の身体で実験してみることだろう。

肉食をやめたら身体が衰弱した、というような話を聞くこともあるけれど、単に肉をやめて、あとの食事がわるければ、そういうこともあるだろう。いきなり玄米菜食に切り替えても、よく噛まなければ玄米をちゃんと消化することもできない。ぼくも玄米に切り替えたばかりの頃は、炊飯器で炊いていたのもあり、よく噛む習慣もなく、ちゃんと消化して栄養にできていなかった(今はよく水に浸してから土鍋で炊くようにしている)。

どんな食事が健康によくて自分の身体に合っているかは、すぐには答えが出ない。日々、実験しながら、自分の身体と相談しながら決めていく必要がある。その判断を最終的に下すのは自分。どんな食事をするにしても、その結果は自分で引き受けることになる。


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by 硲 允(about me)
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