取材の仕事でとある高校へ行ったときのこと。
実習の授業で、一人ずつ順番に作業をしていた。ある男子生徒がちょっとした失敗をして、最初からやり直すことになった。それを見ていたクラスメイトが冷やかした。
「~(名前)、ミスったん?」
「うるせー」
それを聞いていた大人の女性(ゲストで訪れていた)は、こう言った。
「もう一回やりたかったんやて」
失敗した人はもう一回できて、楽しい作業だし、練習になる。だからわざと失敗したらしいよ、という冗談。
「もう一回やりたかったんか」と冷やかしたクラスメイトもその流れに乗った。
こんな機転の効いた冗談をとっさに言うのはなかなかできないことだと思った。
その女性は、ちょっと間を置いてから、誰に向かって言うでもなくこう続けた。
「それぞれ違うからいいんや。みんな一緒だったらロボットや」
これを聞いて、さっきの冗談がとっさに出てきた理由がわかったような気がした。それぞれ個性の違う人間を同じ型にはめようとする圧力に対して普段から抵抗している方なのだと思った。
そういう考えや思いを何気ないシーンに何気ない言葉で対立を生まずに表現するのは簡単なことではない。このやりとりはとても学びになった。
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by 硲 允(about me)
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