学生の頃、数学の問題で解き方がわからないと、すぐに解説を見た。数学は苦手なままだった。
最近、ギターの練習をしていて、わかったことがある。いきなり模範解答を見るのではなく、自分の頭と感覚を使って試行錯誤した後で模範解答を見たほうが上達するということ。
当たり前のことかもしれないが、油断すると怠けてしまいやすい。
音楽の伴奏には、コードというものがある。C、G、Am、Em、Fなど、楽譜にアルファベットで表記される。ギターでコードごとの弦の押さえ方を覚え、正確に押さえてスムーズにコードを切り替えられるようになれば、弾き語りができるようになる。
演奏したい曲の楽譜がない場合、弾き語りするには自分でコードを付ける必要がある。先日、ジョン・レノンの「imagine」が弾きたくて、自分でコードを付けてみると、しっくりくるコードが案外簡単に見つかった。最近、相方のオリジナル曲のコードを何曲も付けたので、コードの感覚が養われてきたのかもしれない。
その後、念のため「imagine」の楽譜を確認してみると、自分で付けたコードとは異なるところがけっこうあった。同じメロディでも、コードは何通りも付けられるので、オリジナルと同じコードを付けたければ、オリジナルの伴奏をよく聴く必要がある。
楽譜で見た通りに「imagine」のコードを奏でると、自分で付けたコードよりも気持ちよく弾けるようになった。曲の雰囲気をつくるのに大事な「味付け」的なコードを自分では無視してしまっていたことに気づいた。
こうやって、自分の感覚を頼りにコードを付けてみてから模範解答を見て覚えたコードというのは簡単に忘れないことがわかった。よく弾く曲であっても、毎回楽譜を見ながら弾いていると、いつまで経ってもなかなかコードを覚えない。
こういうことは、ギターに限らず、いろんなことにあてはまるだろうと思った。
まずは、自分の感覚を頼りに、自分の頭と体を使ってトライしてみる。それで何とかできるようになったり、どうしてもできなくて頓挫してから他人による「模範解答」にあたると、身につきやすい。
読書にしても、何か困っていることがあったり、普段から試行錯誤していることに関する本を読むと、自分の経験と照らし合わせながら内容を吟味でき、書かれたことを覚えようとそれほど意識しなくても忘れないし、すぐに実践で生かしていけるので身につきやすい。その一方で、自分の実践とはほとんど関わりのない分野の本を読むと、読んでいるときは面白くても、読み終えてから少し経つと、読んだ内容をきれいさっぱり忘れてしまうことがよくある(記憶力と想像力がもっとあれば違うのかもしれないけれど)。
本を読むときは、読み始める前に、その本が扱っているテーマについて自分が知っていることや考えていることについて頭の中でまとめたり書き出したりして、自分がさらに知りたいことや解決したいことをはっきりさせ、問いを立ててから読み始めるといいかもしれない。
他人が表現したものを、ただ頭の中でなぞるだけでは何事もなかなか上達しないし身に付かない。自分で考え、感じ、実践してこそ、「自分のもの」になっていくのだと思う。
by 硲 允(about me)
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