子ども向けの「好きなことカフェ」もそのうち始めたい。



今年から「好きなことカフェ」を始めた。好きなことを仕事にしている方の話を聞いたり、ワークシートを使って自分の好きなことを改めて考えたり、好きで「カタチにしたい」ことを実現していくためのワークショップ。今年は主に大人向けだけど、そのうち子ども向けにも開催したいと思っている。

今は子どもが自由に夢を描きにくくなっている時代だと感じることがある。ショッピングセンターで張り出されていた、小学生が将来やりたい仕事ランキングでは、1位が「公務員」だった。「公務員」といってもいろいろな役割や仕事の内容があり、公務員になって何か実現したいことがあるわけではなく、「形態」で選んだという感じがする。親や学校の先生が教えたのだろうという感じがした。夢のある公務員ならいいけれど、消去法で選んだ公務員では面白い仕事ができそうにない。

将来どんな仕事がしたいかをぼくも小学生の頃に書かされたことがあるけれど、何も思い浮かばなかった。結局、その場しのぎで「学校の先生」と書いた記憶がある。

子どもの頃に「将来どんな仕事がしたいか」「将来何になりたいか」と問われても、具体的にイメージがわかない人が多いのではないかと思う。どんな仕事があるか、どんなことが仕事になるのか、ある職業に就いたら毎日どんなことをするのかもよくわからない。だから漠然と、「公務員」「会社員」「学校の先生」「学者」といった、仕事の「枠組み」が選択肢として提示され、回答に挙がる。「会社員」といっても、どんな商品やサービスを生み出すのか、その会社の中でどんな仕事をするのかはさまざま。子どもでも、会社に入ったら業務の内容を自由に選べないことをなんとなく予感し、会社の中で何をしたいのかまでは考えていないかもしれない。「学校の先生」といっても子どもたちに何を伝えたいのか、「学者」といっても何を研究し、どんな世界をつくることに研究を役立てたいのか・・・そこまで考えておかないと、できあがった枠組みの中で課された仕事をこなすばかりになってしまう。

将来、やりがいのある仕事をするためには、子どものうちに「好きなこと」を見つけるのが大事だと思う。「好きなこと」を追求していけば、そのうち仕事につながるし、「好きなこと」なら多少の困難もそれほど苦にならない。

子どもはたいてい、大人たちに与えられた環境や生活パターンの中で暮らしており、「好きなこと」を見つけるのはなかなか難しい。ぼくは子ども(小学生)の頃、ゲームとお菓子が好きだった。これを追求したら仕事になるかというと、「受け身」でやり続けたところで難しい。仕事にするには、「消費者」から「生産者」の立場にまわる必要がある。「ゲーマー」→「ゲーム・クリエイター」、「お菓子大好き」→「お菓子職人、パティシエ」への転換が必要となる。「消費者」としてはそのことが好きでも、「生産者」となるとそれほど好きでなくなる、ということもある。子どもの頃、「RPGツクール」というゲームを買ったことがある。ゲームの中の物語(筋や会話など)を自分でつくっていくというゲームで、決まった枠やシステムの中ではあるけれど、ゲーム・クリエイターのちょっとした体験ができる。このゲームは長続きせず、ぼくが作ったゲームを誰もプレイしてくれず寂しい思いをした。面白くつくられたゲームをプレイするのは簡単で楽しいけれど、それを自分で一から作り出すとなると全く別物になる。

消費する楽しみにばかり浸っていると、自分で何かをつくり出す喜びを忘れてしまいやすい。何かをつくり出すには苦しみも伴うけれど、できたときの喜びは、消費する喜びよりも何倍も大きいことが多い。その喜びを忘れてしまうと、苦しみを味わってまで何かをつくり出したいとは思わなくなる。

小学校の入る前や、小学校低学年くらいの子どもたちを見ていると、自分の頭や体を動かして何かをつくることに大きな喜びを感じているように見える。ところが、小学校で6年間も毎日のように朝から夕方まで椅子に座らされて退屈な話を聞かされ、放課後までさらに頭に知識を詰め込み、何かをつくり出すのではなく一方的に与えられる日々を続けているうちに、いつの間にか「消費者」としてのスタンスが身についてしまいがち。何か「もの」が必要になったら、手元や周りにある材料で工夫して自分でつくろうとするのではなく、まず買うことを考え、どこでいくらで買えるのかを調べる。何かを学びたくなったら、まずはできることから実際に始めてみるのではなく、どこかへ習いに行く。ものを買って満足してほとんど活用しなかったり、話を聞いたり本で読んだりして学んだことを実践で役立てずに終わってしまってはもったいない。

子どものときから好きなことを見つけ、時間やエネルギーを注いでそのことに熱心に取り組み続ければ、そのうち「天才」と呼ばれる域に達することがある。いわゆる「天才」になる素質は誰にでもあるのではないかと思う。そうなれるかどうかの違いは、そのための環境(周りの人や生活環境など)が整い、その中で目標を描いてそこへ向かって自分で努力しつづけるかどうか、ということではないかと思う。小さな子どもたちと接していると、みんな「天才」に見える。それが十分に生かされず、輝いていた目からいつの間にか輝きが失われて無気力になり、人生を楽しむのを諦めてしまうのは残念すぎる。子どもの頃の輝きを持続しつづけるのはそう簡単なことではないけれど、そのために少しでも役立てればと思い、子ども向け「好きなことカフェ」をそのうち始めたい。「好きなこと」に取り組んでつくったものやできるようになったことを発表できる場もあればいいと思うので、「森の文化祭」のようなこともできたらいいなと想像を膨らませている。



【関連記事】
by 硲 允(about me)
twitter (@HazamaMakoto