箸を買う


何年も使っていた箸がすり減って左右の長さがだいぶ違ってきていたので、新しい箸を買った。

秋田の黒檀と紫檀。

漆塗りとそうでないものとがあった。漆といっても、合成のものを混ぜてそうなツヤだったので、漆塗りではないもののほうがいいかと考えた。かといって、何も塗装していないかどうかはどこにも表示されていなかった。

レジのところにいるおじさんをチラ見…うーん、きいてもわからないか…テキトーなことを言われたら余計に買う気が失せるしなぁ、と思って、きかずにしばらく悩む。

しばらく悩んだあと、「ダメ元できいてみるわ!」と相方に告げ、気になる箸を持って早足でレジに迫る。おじさんは笑顔でお会計をしてくれようとしたけど、ストップをかけて質問。木を削ったままで、何もしてないですよ、だから色素が染み込みやすくて1年くらいで買い替えるお客さんが多いですね、と確信に満ちた様子で答えてくれた。ぼくが塗装を嫌がっているのも察したようで、「塗装とか何もしてないですよ」と最後に付け加えた。店員さんに商品について質問をするとテキトーな答えが返ってくることも多いけど、このおじさんの頭の中では、この箸がつくられるときの映像が浮かんでいるように見えた。

相方におじさんの情報を喜んで報告して、楽しく箸を選んだ。ダメ元できいてみてよかった。香川に家探しに来たとき、酒屋さんに入って地酒についてきいてみたら、「口利かな損」と言われたのを思い出した。