藁を届け、音楽を届けるクリスマスイブ。

本物のサンタさんが家にプレゼントを届けに来てくれると、いつ頃まで信じていただろうか。弟がある程度大きくなったとき、ぼくはもうその正体を知っていたけれど、弟にはバレないようにしないとと思っていたのを何となく覚えている。まだほんの小さい頃にその正体に気付いてしまうと、夢をもてない大人になってしまうかもしれないと思い、責任の重大さを感じたものだった。

現実には辛いことや、悲しいこともたくさんある。でも、どんなときでも、いつまでも、「夢」をもっていたい。「夢」をもち続けられるかどうかは、何にかかっているのだろうか。

今年のクリスマスイブは、いろいろとお届けものをしてきた。子どもが夢見るサンタクロースには到底かなわないけれど、クリスマスイブにちょっとした「サンタごっこ」ができるのはうれしい。

サンタさんは白い袋を背負っているが、ぼくは背負子をしょって出掛けた。

中身は、うちの田んぼで育った稲の藁や、クロガネモチの赤い実や、稲穂、それにいろんな道具。稲わらで正月のしめ飾りをつくるワークショップを行った。

背負子をしょって電車に乗ったりまちをぶらついたりしていると、かなり注目された。駅でおばちゃんに話し掛けられ、「こんな稲、どこで売っとん?」ときかれた。何に使うのかと思ったら、稲を燃やした灰を火鉢に使いたいという。珍しいものを背負っていると、珍しい会話が始まる。


しめ飾りづくりは、香川県善通寺市のフェアトレードショップ「zakkaカガラカン」で開催させてもらった。おしゃれなお店に置いてもらうと、不思議とうちで見るのとはずいぶん感じが違ってくる。


自然のものは、おしゃれにディスプレイするのが大事だと言って、相方がセンダンの実を瓶に入れてくれたのもよかった。

ワークショップでは、今回のしめ飾りで使ったハッピーヒルというお米のことや、機械を使わず、陸稲で育てた方法、自然農のこと、近所の農家さんとのエピソードなどをお話した。しめ飾りづくりは、藁のはかまを取るところから。参加してくださった皆さんの作品は、それぞれにセンスが光っていて、練習で何個もつくったぼくのよりいい感じだった。

何かを自分の手でつくり出すときの、生き生きとした表情が見られるのが、こういうワークショップをしていてうれしいとき。人間はきっと、与えられるよりも、自分で何かをつくり出したり、何かを与えるときにより大きな喜びを得られるようにできている。人間はきっと、何でも自分でつくり出せるようにできている。だから、他人に与えるといっても、大したことはできない。大したことはできないけれど、相手が自分で何かをつくり出すためのちょっとした手助けになるようなものを与えて害にはならないだろう。人工的なおもちゃばかり与えるサンタさんは有害かもしれないが、夢と希望を与えるサンタさんなら応援したい。

クリスマスイブの夜は、「RNCラジオ・チャリティミュージックソンLive 2017」に出演させていただいた。まだまだ下手な弾き語りだけど、クリスマスイブの大事な時間にわざわざ来てくれているお客さんに楽しんでもらいたいと思い、精一杯演奏した。トークに力が入り過ぎて歌でちょっと息切れしたのは問題だと思ったけれど、ぎこちない演奏をあたたかく受け取ってくれた皆さんに感謝。


by 硲 允(about me)
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