蚕を殺さないアヒンサーシルク(ピースシルク)のこと。

シルク(絹糸)をつくるとき、蚕は繭に入ったまま茹でられて殺されてしまっているのだろう。現場を見たことがなく、知識もなかったが、そう思っていたら、やっぱり、普通はそうらしい。

ところが、蚕を殺さずにシルクをつくる方法もあるという。

その方法を開発したのは、インドの織物技術研究家であるクスマ・ラジャイア氏。1991年に開発され、2001年から市場に出回り始めたという(参考記事:「命を大切に。不殺生という意味をもつ新しいシルク」MYLOHAS)。

どうやら、野性の蚕の抜け殻を紡いでつくるらしい。蚕を殺す必要がないので、ヒンディー語で「不殺生」を意味する「アヒンサー」という言葉をつけて「アヒンサー・シルク(Ahimsa Silk)」と呼ばれている。そのほかに、「ピースシルク(Peace Silk)」、ベジタリアンシルク(Vegetarian Silk)」、「クルーエルティ・フリー・シルク(Cruelty-Free Silk)」と呼ばれることもあるらしい。

アヒンサーシルクは、羽化した蚕が繭を破っているので、一般的なシルクのように一続きの繊維として巻き取ることができず、綿や毛のように繊維として紡がれ、その結果、一般的なシルクほどの光沢はないが、柔らかさと暖かさに優れたシルクが出来上がるという(参考記事:「ピースシルク」LOHAS CULTURE

MYLOHASの記事によると、羽化した後の繭玉から取れる糸は、蚕ごと茹でる一般的な方法に比べて6分の1の量だという。商売を成り立たせるには、蚕ごと茹でるのが一般的なのも頷ける。

ところが最近では、値段が高くてもなるべく生きものを殺していないものを身に着けたい、というニーズは高まってきているようで、アヒンサーシルクを用いるブランドも誕生している。

たとえば、インドの「cocccon(コクーン)」。創業者はインド人デザイナー、Prakash Jhaさんで、ニューデリーの大学を卒業後、他国でデザイナーとしてのキャリアを積んだあと、母国のためになることをしたいとの想いでブランドを立ち上げたという。Jhaさんが生まれ育ったジャールカンド州は、貧困に苦しむ人々が多く、シルク製品を仲買人に安く買いたたかれていたが、新しいブランドを立ち上げて現地の女性たちを雇い、ピースシルクの製法を教えているという。環境への配慮も行い、太陽エネルギーを使った紡績機を導入しているらしい。(参考記事:「チョウチョが羽ばたくシルクを使ったインドのブランド「cocccon」」Fragments

下は、ネットで検索して出会った、アヒンサーシルクをつかった製品の取り扱いのあるネットショップ。

LUNG-TA(インド、ネパールの製品)
The Tsampaka meto shop(ブータン、ヒマラヤの製品)

日本でアヒンサーシルクをつくっているという情報は見当たらないが、アヒンサーシルクはこれからどんどん広まっていくのではないかと思う。


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by 硲 允(about me)
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