プラスチックを分解・リサイクルするための研究があちこちで進んでいるようだ。
蜜蝋を食べるハチノスツヅリガの幼虫が、プラスチックも分解できると、英ケンブリッジ大学の研究チームが昨年発見したという。ビニール袋などに使われるポリエチレンが完全に分解するには何百年もかかるが、この幼虫は、1時間弱でプラスチックの袋に穴を開け、蜜蝋を分解すると同じような方法でプラスチックの化学結合を分解できるらしい。このニュースの時点では、幼虫がプラスチックを自然分解する化学作用はわかっていないが、幼虫の中にいる微生物が関係しているのではないかと研究チームはみていた。(参考記事:BBC)
その後、つい最近の記事で、英ポーツマス大学の研究チームが自然由来の酵素を使ってプラスチックを分解する研究に取り組んでいることを知った(参考記事:BBC)
その酵素は、大阪府堺市にあるリサイクル施設のごみ山から発見された細菌(イデオネラ・サカイエンシス)が生成する「PETase」と呼ばれるもので、ペットボトルの原料であるポリエチレンテレフタラート(PET)を数日で分解し始めるらしい。この細菌はプラスチックを主なエネルギー源としているらしく、そんな細菌がいたとは(うちの庭にもいるだろうか!?)。
石油から工業的に作られるポリエステルは、今もある程度リサイクルされているが、リサイクルの過程でだんだんと劣化し、最終的には結局、埋め立てられることになるという。食卓用の布巾が汚れて床用になり、外用になり、最後には捨てるか燃やすかするしかなくなる、というのと同じこと。
リサイクルされたペットボトルからつくられたフリースを見たことがあるが、例えばペットボトルからフリースになり、さらにリサイクルされたフリースが絨毯になり…最終的には結局埋め立てられる。
ところが、「PETase」という酵素を使ってポリエステルを分解する場合、ポリエステルを原材料の段階まで逆行させることが可能らしく、素材を劣化させずに再利用することができるという。
プラスチックをリサイクルする過程で素材が劣化していくことへの問題意識をそもそも持っていなかったが、まずはそこが始まりなのだと知った。プラスチックを原材料の段階まで新しくリサイクルできるといっても、そのためにはエネルギーや労力がかかり、プラスチックを使い放題、捨て放題にしていい、というわけではもちろんない。
「PETase」の大規模な利用が可能になるまでに数年かかる見通しらしい。大規模なリサイクルにおいて経済性を獲得するためには、分解の速度を加速させる研究も必要とのこと。
ぼくの住む町にはごみの最終処分場があり、埋め立て地がどんどん拡大されていくのを目の当たりにしている。こんなに大量に埋め立てて、その後、どうなってしまうのだろうと、処分場の前を通るために気分が沈む。そのうち、どんなごみでも分解してしまう酵素や微生物が発見されるときが来るだろうか?
将来のリサイクル技術に期待しつつ、暮らしの中で今できるのは、埋め立てなくてはいけない素材を使った製品になるべく頼らないことだろう。
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