身体の感覚を通してリアルな世界を体験することで前に進んでいきやすくなる


現代社会では「頭でっかち」になりがち。東京にいた頃はほとんど椅子に座ってデスクワークや読書ばかりしていたが、香川に移住して1年目はデスクワークをほとんどせずにひたすら田んぼの草刈り・・・田畑や庭や森に出るようになり、ようやく頭(脳)と身体のバランスが回復してきたような感じがしている。

知識や情報ばかり頭に詰め込んでも、自分で実際に何かをつくっていかないと、なかなか前へ進んでいかない。畑一つとっても、いろんな人がいろんな農法を提唱しているが、実際に畑で土や植物やいろんな生きものたちとふれあって、目の前のリアルな世界を観察してこそ、ようやく「腑に落ち」、自分のたしかな知識になる。誰かがその人の感覚を通して観察したリアルな世界を記述した本を読むのも勉強になるが、「どうやらそうらしいよ」という以上にはわからない。「どうやらそうらしい」レベルの知識を集めれば集めるほど、何が本当なのか迷わされてしまうおそれもある。「百聞は一見にしかず」・・・リアルな世界で自分で実際に試して、自分の感覚を通じて体験することで、「自分にとっての真実」を集めていける。あとから自分自身でそれを修正していく場合もあるが、「他人にとっての真実」を集めてばかりいるよりも前に進んでいきやすい。

ぼくは子どもの頃や学生の頃、自分の考えや主張なんていうのは特にないような気がしていた。自分の感覚を通した体験が少なく、その幅が狭かったからかもしれない。一見平和でまずまず快適な暮らしが続いていたので、自分の意志を働かせて何かを守ろうという必要性もあまり感じていなかった。

ここまで書いて、ふと「可愛い子には旅をさせろ」という言葉が浮かんできた。旅では自発性を回復して自分の意志を働かせないと前に進んでいけない。そして、本やテレビによるものではなく、リアルな体験から知識や情報が得られる。

「リアルな体験」と「身体」は切り離せない。都会へ旅に出ると、早朝に散歩したくなる。太陽の光を浴びて、朝露にきらめく植物を見て、触れているうちに、身体と心の感覚が目を覚ましていく。