香川に移住してつくり始めたばかりの頃の円い畑 |
大学の頃から東京で10年ほど暮らしていた。最後の頃、ぼくはだいぶ弱っていた。
腰がわるくてジムで特別なレッスンを受けていたが、普段、運動不足で身体が弱り、冬を越すのが辛かったときはいよいよやばいと思った。
コンクリートで覆われた都会の風景に怒りを感じ、コンクリートの隙間で育つ草花を見て心の潤いを何とか得ていた。
知識を得るにつれ、農薬や化学物質を恐れ、電磁波や放射能に脅かされ、恐いものがどんどん増えていき、暗い気分でいることが多かった。
仕事はそれなりにできるようになったが、大して喜びは感じられなかった。コーヒーで頭を覚醒させ、パソコンの画面を見ているとあっという間に日が暮れた。
ひと仕事終えてから、近所の公園を相方と散歩するのが一日の楽しみだった。老人の心境がわかりかけたような気がした。
香川に移住してから、暮らしが一気に変わった。
来たばかりの頃は、山が見え、大きな空や夕焼けが見え、たくさんの星が見え、澄んだ空気を思い切り吸えることに大喜びしていた。
朝目覚めるのが楽しみになった。家の改修に田畑に庭仕事に、やることは山のようにあるけれど、「やることが無限にあること」が喜びだった。
田畑や山の仕事で身体が鍛えられ、一日中動きまわれるようになった。往復4時間かけて自転車で山の上まで行ったとき、東京にいた頃の自分の身体に同じことをさせていたら寝込んでいただろうと思った。
東京にいた頃、未来に漠然とした不安を感じていたが、未来に希望を描けるようになった。
あのまま東京にいたら、今頃どうなっていただろうと時々思う。
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