機械の少ない暮らしは耳にも快適。暮らしの「音」を感じてみる

「ジー、ジーって音しない?」と相方。

耳をすませてみたが、ぼくには何も聞こえない。

「ひげ剃りから聞こえるような気がする」と相方。

充電中のひげ剃りがささったコンセントのスイッチを切ってみると、音が消えたのがぼくにもわかった。




「なんでこの音に気づかんかったんやろ!」消えてみてようやく、不快な音が鳴り続けていたことがわかった。

「ミュージシャンになれるで!」相方にそう言うと、不愉快そうにした。

「鼻わるいで」

「においはぼくが担当するから大丈夫」

「鼻使うことあるんかなぁ?」

「CDが臭わんかどうかとか・・・」

こんな話をしていて、なるべく電気に頼らない暮らしには、不愉快な機械音が少ないよさもあることに改めて気づいた。

普段、機械音のほとんどない室内で暮らしていると、旅先のビジネスホテルで寝るときにエアコンや冷蔵庫などの機械音が気になることがある。

そういえば、大学生の頃に暮らしていた寮の小さな部屋に、サイズを考えずに通販で購入したでっかい冷蔵庫が届き、「ゴー・・・」という大きな機械音になれるまでしばらくかかったのを思い出した。冷蔵庫は寝るときもスイッチを切るわけにはいかないので、最初は睡眠の妨げになるほどだった。

今は、冷蔵庫もエアコンも使わなくなった。冬の間、石油ストーブは使っていて、その上でやかんのお湯やスープの沸く音が聞こえる。ぼくは音に敏感なほうで、耳障りな音が鳴っていると機嫌がわるくなってきやすい。昨夜も、相方と話している最中、やかんのお湯が沸きすぎる音が気になって目がちらちらとそっちに行っているのを相方が察知して、やかんの位置をずらした。そんなに神経質な人は少ないと思うけれど、人間は知らず知らずのうちに周辺の音からけっこう影響を受けているように思う。

家の中にいると、外から鳥の声もよく聞こえてくる。昨日はハトの悲しそうな鳴き声が聞こえてきた。「悲しそうやなぁ・・・」と相方が言うと、次はもう少し元気に鳴き出した。「聞こえたんかな?」と笑った。昨日は、近所の畑をトラクターで耕していて、たぶん土から出てきた虫を食べにカラスがたくさん集まってきた。



今日もカラスの鳴き声がよく聞こえてくる。

不愉快な機械音が増えた中で暮らしていると、いちいち気にしていたら気持ちがまいってくるので、耳が聞かないふりをするクセがついてくるのかもしれない。時々、注意して耳をすませてみると、それまで気づかなかった音が聞こえてくるかもしれない。


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by 硲 允(about me)
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