動物や鳥や虫たちと仲良く暮らす方法に興味がある。
先日、本屋でぶらついていたら、面で置かれた「はたらく動物と」というタイトルの本が目に留まった。
ページをめくってみると、盲導犬、鵜飼の鵜、耕す馬など、人間と共に暮らし、人間と共に働く動物のことが書かれた本らしい。これは参考になるかもしれないと思い、買ってきた。
読み始めると、どうすれば動物と仲良く暮らせるか、という「問い」を忘れて面白く読んだ。人間と動物の付き合いも、人間と人間の付き合いも、そう変わらないのだと思う。
仲良く付き合うには、まず、相手のことを知る必要がある。相手の嫌がることはしないほうがいい。お互いが自分の持ち味を生かせる関係を築けるといい。
動物の場合、こちらから「相手のことを知る」というのがまず、人間相手の場合と違ってなかなか難しそうだ。人間の場合、「自分だったら」と想像しやすいし、この人のこういうところはあの人に似ているな、とか、知識の蓄積がある程度あるが、初めて付き合う馬、となると、予備知識が足りなすぎる。
初めて会った人間の場合、目を合わせて挨拶したり、ビジネスの関係だったら名刺を交換したりするが、馬の場合、同じようにはいかない。初めて会った馬とどう接すればいいかについて、こう書かれていた。
動物はまず、距離を取りながらその人間のことをじっくり観察したいのだろう。うちのクモや庭の鳥たちもそんな感じ。大丈夫そう、と判断すれば、だんだん距離を縮めてくる。人間もそうか(距離の取り方は人それぞれで、いきなり近づいていく人もいるけれど)。
上の本の写真で付箋を付けている箇所のほとんどは、岐阜で暮らす鵜飼の山下純司さんの言葉。
鵜飼という職について、全く知らなかった。岐阜市には、現在6名の鵜匠がいて、宮内庁に献上する鮎を獲り、「宮内庁式部職」に任命されているらしい。世襲制で、引退するとその家の息子が跡を継ぐという。
生まれたときから鵜匠になることが決められていた山下さんに、著者の金井さんが「ほかの仕事がやりたいとは思わなかったですか」とたずねると、山下さんはこう答える。
金井さんと会って取材の説明を受けたあとの言葉も力がある。
ぼくもどちらかというと「たわけ」だけど、こうスパッと言ってくれると気持ちがいい。悪意がないからだろう。「攻撃的でも批判的でもなく、挨拶がわりの頑固じじいのサービスのような口ぶりで、なんだか、いきなりおもしろい」と金井さんは綴る。
新しく連れてこられた野性の鵜を毎日「なぶって」(触って)いると、だんだん人間のことがわかってきて、自分の役割はこういうことか、と理解するらしい。コンビを組む鵜同士(つがいではない)がしゃべっている、という話も面白かった。
通常、鵜が逃げないように羽を切ってしまうらしいが、山下さんは羽を切らず、それでも逃げないという。「鵜は、鵜飼の仕事が好きなんですかね」と金井さんがきくと、「そりゃ、好きなんやろ、逃げんのやから」と山下さんは答える。
全部鵜から学んだ、という山下さんは、100歳まで生きて、鵜から教わったことをお孫さんに伝えたいという。
山下さんの健康術にも付箋を貼った。
「朝からテレビ見とる鵜なんかおらへん」で笑った。たしかに、朝起きてすぐに外に出て体を動かすと元気がでる。朝起きていきなりパソコンのスイッチを付ける日は、一日動きがわるくなる(「たわけ」といわれても仕方がない…)。
この本は、絵も金井さんがかかれていて、手づくり感があり、写真とはまた違った想像がふくらむ。こんなに自由に絵がかけたら楽しいだろうなぁと思って、絵を模写させてもらって練習した。一冊でずいぶん楽しませていただいた。
はたらく動物と(金井真紀 文と絵)
【関連記事】
by 硲 允(about me)
twitter (@HazamaMakoto)
先日、本屋でぶらついていたら、面で置かれた「はたらく動物と」というタイトルの本が目に留まった。
ページをめくってみると、盲導犬、鵜飼の鵜、耕す馬など、人間と共に暮らし、人間と共に働く動物のことが書かれた本らしい。これは参考になるかもしれないと思い、買ってきた。
読み始めると、どうすれば動物と仲良く暮らせるか、という「問い」を忘れて面白く読んだ。人間と動物の付き合いも、人間と人間の付き合いも、そう変わらないのだと思う。
仲良く付き合うには、まず、相手のことを知る必要がある。相手の嫌がることはしないほうがいい。お互いが自分の持ち味を生かせる関係を築けるといい。
動物の場合、こちらから「相手のことを知る」というのがまず、人間相手の場合と違ってなかなか難しそうだ。人間の場合、「自分だったら」と想像しやすいし、この人のこういうところはあの人に似ているな、とか、知識の蓄積がある程度あるが、初めて付き合う馬、となると、予備知識が足りなすぎる。
初めて会った人間の場合、目を合わせて挨拶したり、ビジネスの関係だったら名刺を交換したりするが、馬の場合、同じようにはいかない。初めて会った馬とどう接すればいいかについて、こう書かれていた。
いきなり馬に近づいてはいけない。距離を保ちながら静かにたたずんでいると、必ず馬のほうから気づいて、「ふむ?」とサインを出してくれる。それから近づく。馬に向かってちゃんと頭を下げて挨拶をし、鼻先に手をさしのべて自分の匂いをかいでもらう。そうすれば馬と仲良くなれるのだという。
出典:『はたらく動物と』(金井真紀 文と絵)p.66
動物はまず、距離を取りながらその人間のことをじっくり観察したいのだろう。うちのクモや庭の鳥たちもそんな感じ。大丈夫そう、と判断すれば、だんだん距離を縮めてくる。人間もそうか(距離の取り方は人それぞれで、いきなり近づいていく人もいるけれど)。
上の本の写真で付箋を付けている箇所のほとんどは、岐阜で暮らす鵜飼の山下純司さんの言葉。
鵜飼という職について、全く知らなかった。岐阜市には、現在6名の鵜匠がいて、宮内庁に献上する鮎を獲り、「宮内庁式部職」に任命されているらしい。世襲制で、引退するとその家の息子が跡を継ぐという。
生まれたときから鵜匠になることが決められていた山下さんに、著者の金井さんが「ほかの仕事がやりたいとは思わなかったですか」とたずねると、山下さんはこう答える。
そんなもん、鵜の家に生まれた人間は鵜をやるいうんが、長良川では昔から当たり前のことやで。いいも嫌もない。常にこのあけすけな語り口で、読んでいて爽快感がある。
わしに言わせりゃ、学校行って、就職して、週に二日も休んでな、六〇で定年になったら明日から来んでもいいって言われて、それからボサーッとして、老人ホーム入って死んでいくのもな、意味ねえわなぁ。
出典:『はたらく動物と』(金井真紀 文と絵)p.41
金井さんと会って取材の説明を受けたあとの言葉も力がある。
「ふーん。わしのはなしを聞いて、本にするのけ。わしは本は読まん。ぜんぶ鵜から学んどるで。本を書く人間や学者先生なんてもんは、たわけじゃ思うとる」
「たわけ……」
「自然のことも知らねえで、パソコンなんて使っとるもんはたわけじゃろ」
出典:『はたらく動物と』(金井真紀 文と絵)p.38
ぼくもどちらかというと「たわけ」だけど、こうスパッと言ってくれると気持ちがいい。悪意がないからだろう。「攻撃的でも批判的でもなく、挨拶がわりの頑固じじいのサービスのような口ぶりで、なんだか、いきなりおもしろい」と金井さんは綴る。
新しく連れてこられた野性の鵜を毎日「なぶって」(触って)いると、だんだん人間のことがわかってきて、自分の役割はこういうことか、と理解するらしい。コンビを組む鵜同士(つがいではない)がしゃべっている、という話も面白かった。
通常、鵜が逃げないように羽を切ってしまうらしいが、山下さんは羽を切らず、それでも逃げないという。「鵜は、鵜飼の仕事が好きなんですかね」と金井さんがきくと、「そりゃ、好きなんやろ、逃げんのやから」と山下さんは答える。
全部鵜から学んだ、という山下さんは、100歳まで生きて、鵜から教わったことをお孫さんに伝えたいという。
山下さんの健康術にも付箋を貼った。
朝、目が覚めたらすぐ起きる。せっかく自然に目が覚めたんやから。嫌なことは朝早くやるんや。青色申告とかな(笑)。朝早く起きて仕事すると腹が減るやろ。朝メシをたくさん食べるやろ。身が丈夫になるやろ。それでまたはたらける。好循環や。人間以外の生き物は、みんなそうしとる。目が覚めたらすぐに体を動かす。朝からテレビ見とる鵜なんかおらへん。だから病気にならへんのや。自然界のスケジュールから得ることはいくらでもあるで。
出典:『はたらく動物と』(金井真紀 文と絵)p.56
「朝からテレビ見とる鵜なんかおらへん」で笑った。たしかに、朝起きてすぐに外に出て体を動かすと元気がでる。朝起きていきなりパソコンのスイッチを付ける日は、一日動きがわるくなる(「たわけ」といわれても仕方がない…)。
この本は、絵も金井さんがかかれていて、手づくり感があり、写真とはまた違った想像がふくらむ。こんなに自由に絵がかけたら楽しいだろうなぁと思って、絵を模写させてもらって練習した。一冊でずいぶん楽しませていただいた。
はたらく動物と(金井真紀 文と絵)
【関連記事】
by 硲 允(about me)
twitter (@HazamaMakoto)