山口二郎さん(法政大学教授)講演会の感想。「プロクルステスのベッド」のたとえ話について



法政大学教授の山口二郎さんの講演会が香川県社会福祉総合センターで開催され、参加してきた。

山口二郎さんのことは、岩波ジュニア新書の「政治のしくみがわかる本」という本を読んで知った。



とてもわかりやすく、かつ熱意と誠意の感じられる本で、それ以来、記事を時々拝見するなどしていたが、直接お話を聞くのは初めてだった。

講演のタイトルは、「政治危機と私たちの選択 憲法と民主主義を守る大結集を」。

安倍政権が国家を私物化し、法の支配が失われていること、国会でまともに議論しようとせず議会政治が瓦解していること、それに伴う社会の危機的状況など、パワーポイント51枚に及ぶ広範囲なお話だった。

所得が下がり、貧困が拡大し、国民の自由が奪われつつあるのに、政府の統計データみよると、国民の社会への満足度や「民主政治」への満足度は高まってきていて、日本の「美点」に対する誇りも高まりつつあるという。

「プロクルステスのベッド」の話が印象に残っている。

小さなベッドに縛り付けて、そこからはみ出す手足を切断するという拷問がかつてあったらしい。(ニュアンスがちょっと違ったかもしれないけれど)人間、自分で新しい枠組みを作っていくよりも、もともとある枠組みにはまっていってしまいがち、というようなお話だった。

この世の中、放っておいてもいろんな枠組みを次から次へと与えられるので、たしかに余程気を付けておかないとそうなってしまうと思う。

拷問された人々は逃れられず強引にベッドに縛り付けられたのだろうけれど、今の日本に生きる人々はたいてい、まだベッドに縛り付けられるのを拒否する自由が残されている。自分から進んでベッドに横たわりに行くことだけは避けたい。

そのためには、いつの間にか与えられて、いつの間にかその中にはまっている枠組みに気づくことが重要だろう。そのためには、知識が必要であり、自分でよく思考することが必要。

政治への無関心は、結局は知識の不足であり、思考の怠惰だと思う。知れば何かを感じるし、自分で考えれば行動が起こる。目の前のことやごく身の回りのことだけで精一杯になると、自分から時間的・距離的に遠いことに考えや想いが及ばなくなりがち。しかし、遠いからといって、自分とは無関係ではない。知らず知らずのうちに遠くで起こることの結果が自分の目の前や身の回りに迫ってくるけれど、知識の不足や思考の怠惰により、そうしたつながりについてよく考えようとしなくなる。

知ること。考えること。対話すること。行動を起こすこと。それらの大切さについて改めて考えさせられた。


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by 硲 允(about me)
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