「本と音楽とコーヒー」について。人生を豊かにした1冊、1曲(枚)、1杯は?

炎天下で炭をおこして朝から夕方まで熊手をつくり続けた日、夕食後に無性にスイカが食べたくなり、近所のマルナカ(香川のあちこちにあるスーパー)へ自転車を飛ばした。ちょっと涼んでいこうと思って本コーナーを見ると、「本と音楽とコーヒー」を特集したCREAという雑誌が気になってぱらぱらと立ち読みした。100人の著名人による、思い入れのある本と音楽、それからコーヒーについての話が紹介されている。


CREA2017年9月号 100人の本と音楽とコーヒー。



半額になった石川県産のスイカを一気に食べ過ぎてお腹をなでながら、そんな特集があったことを相方に話すと、「あんたもそのテーマで書いてみたら?」と言われたので、それも面白そうだと思って書いてみることにした。

●本


「和解」(志賀直哉 著)



会社を辞めて、ひとまずフリーランスで翻訳の仕事をしていこうと決めた頃、日本語の勉強のために読み始めた。読み終える頃には、翻訳よりも日本語で文章を書くことに興味が移っていた。この本を読むまで、日本語を美しいと思ったことがなかったけれど、美しい日本語というものが存在することを知った。

著者が自分の心情を克明に描いているのを読むと、ぼく自身、自分の心の動きに敏感になった(神経質にもなって相方に迷惑をかけたけれど・・・)。誰かにこう考えろ、こう感じろ、と押しつけなくても、自分のことを書くことで他人に大きな影響を与え得ることを知った。

この本を読んだのがきっかけで、翻訳の勉強は脇に置いて小説三昧の日々が始まった。


●音楽


「花鳥風月」(スピッツ)



小学生の頃、従兄が好きな曲を集めてダビングしたカセットテープの中で流れたスピッツの「空も飛べるはず」と「チェリー」を聴いて一瞬でスピッツファンになった。ところが、親にもらったお小遣いでCDを買うのはませた行動のようでなぜか恥ずかしくて、なかなか買えなかったけれど、中学生の頃に勇気を出して初めて買ったスピッツのアルバムが「花鳥風月」。ジャケットも和風で好きだった。

当時、子ども部屋でゲームボーイでポケモンをしながら、ゲームの音量をゼロにして「花鳥風月」をラジカセで流していた。自分の部屋と言っても、ドアもなく、隣の台所に音がまる聞こえ。ぼくは曲を聴くときに、なぜか歌詞の意味をほとんど考えないことが多く、子どもの頃は特にそうだった。「おっぱい」という曲で「君のおっぱいは世界一」と連呼されているけれど、家族はそれを聞きながらどういう気持ちだったのだろうかと、時々恥ずかしくなりながら思い出す。


●コーヒー


大学生の頃まで、ぼくは紅茶派で、コーヒーはお腹を痛くする危険な飲み物だと思っていた。相方がコーヒーを淹れようとするのを必死で止めたこともあった。ところが、飲み始めると案外大丈夫で、インスタントからドリップになり、豆を自分で挽くようになり、そのうち生豆を買って自分で焙煎するようになった。


生豆はいつも、無農薬のコーヒーを専門に扱う東京の「ろばや」さんから届けてもらっている。自分で焙煎すると煎り加減を自分好みに調整できるし、煎り立ては特別に美味しい。

飲み過ぎると神経が過敏になって、身体の弱っているあちこちに痛みが出てくるので、最近は家では飲まないようにしている。飲み始めると中毒になって、コーヒーを飲むために朝起き、コーヒーを飲むために生きる、というふうになって、人生の目的をコーヒーに乗っ取られてしまう。


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by 硲 允(about me)
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