職場で「派遣さん」や「バイト君」と呼ぶ(呼ばれる)ことについて



派遣社員として働いている人が、会社で「派遣さん」と呼ばれるというのを何かの記事で読んだ。


そういえばぼくも、大学生の頃、NHKでアルバイトをしていたときに、「バイト君」と呼ばれていたのを思い出した。ニュースの原稿を淡々とキーボードで打ち込んでおじさんたちは、アルバイトで来ている学生たちの名前を覚えようともしなかった(それほど数がいるわけでもないのに)。腹が立って「正社員君」と呼び返してやろうかとも思ったけれど、その勇気はなかった。「こんな大人にはなりたくない」と思ったものだった。

なかには、学生に対して対等な感じで接してくれる人たちもいた。そういう人たちは、比較的若い派遣社員に多かった。正社員の席にあぐらをかいてアルバイトの学生を顎で使うような態度のおじさんたちとは、同じフロアなのに住む世界が違うようだった。当時は、NHKの職場で「派遣さん」と呼ぶのを聞いた覚えがない。業界や会社にもよるだろうし、もしかすると、最近になってそう呼ぶ人が増えてきたのかもしれない。ちなみに、2012年から2016年にかけて、日本の非正規労働者の数は1816万人から2023万人に増えているらしい(総務省「労働力調査」による)。

グーグルで「派遣さん」と検索すると「派遣さんと呼ばれる」「派遣 社員 バカにされる」といった検索キーワードの候補が出てくる。こうした候補には、検索されることが多い検索ワードが選ばれる。おそらく、これらのキーワードで検索する人は、「派遣さん」と呼ばれたり、派遣社員だからといってバカにされている派遣社員の方本人だろう。そういう方たちがいかに多いかを、この検索候補が物語っている・・。

同じ職場で働いている人の名前を覚えようともせず「派遣さん」や「バイト君」で通そうとするのはあまりに傲慢すぎる。組織の中の立場でエラくなったつもりになったり、他人を見下したりするようになったら、人間「おわり」だと思う。

そして、そんなことをしていると、自分も結局、他人から大事にされなくなる。NHKで威張ってアルバイトの学生に怒鳴り散らしていたアナウンサーがいた。ぼくがアルバイトをやめた後、そのアナウンサーは問題を起こしたか何かで異動させられたという噂を聞いて、正直なところ、「よかった、よかった。もっと早くいなくなってたらよかったのに」と思った。いなくなって喜ばれる人間にはなりたくないものだ。

威張られる立場からすると、威張っている人間を腹立たしく思うが、威張っている側もたいして幸せではないはず。自信がなく、実力もなく、他人にも尊敬してもらえず大事にもされず、いろいろとストレスや悩みも抱えていて、威張っていないとやってられないところがあるのだろう。威張っている人間に対しても思いやりを忘れないやさしさと強さもほしいところだけど、なかなか難しい・・・。

職場で「派遣さん」なんて呼ばれたら、呼ばれるたびに腹が立つだろう。職場で名前を書かされる機会があったら「派遣なんちゃら(下の名前)」と書いてやるか、それとも、名前を覚えさせるために名札でも付けていくか・・・。


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by 硲 允(about me)
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