写真集「狼煙」(写真・文 照井壮平)発売。翻訳を担当させていただきました


英語への翻訳を担当させていただいた写真集「狼煙」(写真・文 照井壮平 / 道音舎)が発売されました。

照井壮平さんは、和歌山で生まれ育ち、約25年にわたって熊野や高野山などで撮影を続けてきた写真家。

熊野や高野山は、古くから続く信仰の地で、テレビや雑誌などでもよく特集が組まれるけれど、照井さんは、「ぼくが小さい頃から感じている熊野、高野は、もっと怪しく荒ぶる映像記憶です」と言います(本書前書きより)。

本書に掲載されている写真は、観光用の写真や映像ではなかなか見ることのできない、現地に生きる人々の息遣いや、はるか昔から存在する自然の奥深さが感じられます。ぼくは和歌山市で生まれ育ち、熊野の方には時々行きますが、ぶらっと行ったくらいではお目にかかれない景色ばかり。山伏の修行に4年間も同行されたり、龍神村の山奥の民家で桜を見つけ、一年後の花咲くころに再び撮影に行ったり。


69枚のモノクロ写真の他に、撮影時に感じたことなどを書いた照井氏のエッセイ9編も収録されています。このエッセイがまたよくて、時に荒々しい自然の中で体を張って撮影を続けてきた力強さと、芸術を追求する繊細さが併存しているように感じました。照井さんが話した内容を、紀伊半島を拠点とする出版レーベル「道音舎」の北浦雅子さん(本書の編集・発行人)が編集されたとのこと。フランクな話し言葉を適度に残しつつ、文章としても美しく仕上がっています。独特の言い回しが多く、日本語の微妙なニュアンスを英語に訳すのは苦労したけれど、苦労し甲斐のある文章でした。

本のデザインを手がけたのは、ぼくの弟の硲勇さん(ハザマデザイン事務所 代表)。表紙一つとっても、シンプルなデザインのなかに繊細な奥行きが感じられます。

この完成品に至るまでに、どのようなプロセスやドラマがあったかが、道音舎のブログで紹介されていて、面白くて全部読みました。

道と本を開設しました | 道と本 | 道音舎

一冊の写真集は、それぞれ特技を持った方たちのそれぞれの持ち場での努力と協力によって生まれるんだなぁ、というのが、臨場感をもって描かれています。お互いの技術や感性を尊重して協力し合えることの喜びが伝わってくるレポートです。

「コデックス製本」という特殊な方法が用いられていて、ページが開きやすくなっている。


「狼煙」のウェブサイトで、写真を何枚か見ることができます。

ご購入は、取扱書店(「狼煙」ウェブサイトに一覧があります)か、ウェブサイトからも可能です。


お店でお取り扱いいただく場合、買い切り、あるいは委託のどちらかで1冊から可能で、詳しくはこちらをご覧ください


by 硲 允(about me)
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