先日、第48回衆議院選挙の期日前投票に行ってきた。
街を歩いていると、選挙ポスターがあちこちに張り出されているものの、選挙カーと出会うことも演説の声が聞こえてくることも少なく、前回の参議院選挙のときに比べて、選挙期間中の熱気が感じられない。街に出た人たちの会話からも選挙の話題は聞こえてこない。選挙の結果は、自分たちの未来の暮らしや人生を左右するが、大半の国民はそのシステムの外に取り残されてしまっている(情報に対して受け身でいると取り残されるように仕組まれている、ともいえる)。
今回の衆議院解散を、安倍首相は「国難突破解散」とネーミングしたが、「ボク難突破解散」と揶揄されている。森友学園と加計学園に関する国政私物化疑惑が深まるなか、臨時国会でさらに追及されることを恐れたことが、この時期での解散理由の一つだと見られている。森友学園に対して国有地を8億円値引きした問題について、内閣から独立した機関である会計検査院の調査結果が10月下旬頃に発表される可能性があるという。
また、民進党から離党者が相次ぐなど、野党の態勢が整わないタイミングを狙ったともみられている。
前原誠司代表による民進党の解党について、「日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか」などの本で有名な矢部宏治さんの論考を興味深く読んだ。
誰が首相になっても、総選挙後に必ず起こる「2つの重大な出来事」(矢部 宏治) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)
これによると、今回の民進党解党の裏側にある本当の目的は、「安全保障の問題から左派(リベラル派)の影響力を完全に排除する」ことだという。つまり、米軍に100%従属する態勢をつくる、ということ。
矢部さんはさらに、選挙後に何が起こるかについても予言し、
選挙後に誕生する巨大な保守連合の、新たな目標として設定されているのは、まちがいなく、と述べる。これらはいずれも、アメリカの軍産複合体のシンクタンクによって、以前から集団的自衛権とともに日本の課題とされてきたテーマだという。
① 全自衛隊基地の米軍使用
② 核兵器の陸上配備
の2つである。
読むだけで寒気がしてくるような未来予想図だけど、絵空事とは思えない。
こうした流れを食い止めるには、今回の選挙でなるべく与党の圧勝を食い止めることが必要になる。 「自民党・公明党」、「希望の党・日本維新の会」、「立憲民主党・共産党・社民党」の3極と報道されていることが多いが、日本維新の会や希望の党は、自民・公明と似たり寄ったりの立ち位置で、与党への反対勢力のつもりで票を投じても、アメリカに従属する「保守連合」を強化するだけの結果となってしまう。希望の党や日本維新の会が選挙の後に自民と連立する可能性も指摘されている。
「保守」や「リベラル」などのレッテルは、定義を明確にせずに使われることが多いけれど、本来はどういう意味なのかを考え、各政党の立ち位置を知るのに、こちらの記事が参考になった。
緊急対談 衆院選で問われる日本政治の新しい対決軸、リベラル陣営のリアリズムとは(山下芳生×中島岳志) | 週刊金曜日ニュース
選挙というのは、一体何を「守り」、どんな未来をつくっていきたいのかについて、改めて考える機会になる。「面倒だから何でもいいのでお任せします」とする自由もあるけれど、お任せしているうちに気が付いたら崖っぷちに立たされていた、ということになりかねない。崖がすぐそこに迫っていることに、多くの人が気付き、多くの警告が発せられている。その一方で、「そこは崖じゃありませんよ」「崖は別の方向にありますよ」という声もある。どの声に耳を傾けるか、それを聞いてどう行動するかは一人ひとりに任せられている。いずれにしても、ごとごとと揺れて時々痛いけれどまずまず快適な乗り物に乗って行き先に無頓着なまま知らん顔をしていられる猶予期間は残り少なくなってきているのではないか、という危機感を感じる。とはいえ、今からでもまだ、引き返したり方向転換することはできるはず。
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