「できた!電気代600円生活」(はらみづほ 著)という本を前に図書館で見つけて読み始めたら、面白くて一気に読んでしまった。
都会のマンション暮らしの著者は、「電6生活(電気代月600円台の生活)」をされているとのことで、ネットで調べてみると、その後、さらに電気代が下がって月200円台になったという。「あるものをイカす」をテーマに暮らし始めたら、いつの間にかそうなったそうな。
うちも、「電気代を節約するぞー!」と思って取り組んできたわけではないが、不必要な電化製品を減らし、いろいろな手仕事を楽しむようになり、いつの間にか電気代が安いときで500円台になった。
この本では、著者が実践されてきた暮らしのアイデアがいろいろと紹介されている。例えば、段ボール箱と湯たんぽを使った足湯コタツ、調理途中の鍋に毛布などをかぶせて保温調理する「ほっとクッカー」、ラップの代わりに皿、ちらし、ハガキ、ビニール袋など手近なものを何でもフタにする「フタ利ぐらし」など。このようにネーミングがユニークで、イラストも愉快で楽しく読める。脱冷蔵庫の先輩や自家発電の先輩の訪問記など、ところどころに入ったレポートやエッセイも面白い。読むのはラクで楽しいけれど、これだけ楽しく面白く読めるように作りこむのは大変だろうなぁと思った。
「缶飲料」は、この本執筆当時で「グッバイ暦7年」だという。
「缶ビールを買うなんて!」と「エコ友」に激しく非難されたエピソードが紹介されている。 缶ビールがどうしてそんなにいけないのかと思って読み進めてみる・・・。アルミ缶の原料であるボーキサイトをつくる工場がある中国の町は黄色い粉塵に満ち、公害の原因になるし、ボーキサイトをアルミに精製する工程では時計が止まる磁場になるほど膨大な電流を流し、「アルミは電気の缶詰」と言われることもあるくらいだという。
グーグル検索してみると、アルミニウムのリサイクルは、原料のボーキサイトから精製するのに必要なエネルギーの3%で行うことができるという(アスカ工業株式会社ウェブサイトより)。アルミ缶になるべく頼らないのが一番だろうけれど、アルミ缶に入った商品を買ったときは、ちゃんとリサイクルするのとしないので、大きな違いになることを知った。
著者は以前はずっと「オーガニック」と「ベジタリアン」が苦手で、海外の旅の途中、現地の庶民食を見下し、外国人用の洒落たカフェでしか食事をしない「オーガニックなベジタリアン」旅行者たちに辟易としていたという。しかし、帰国後に「オガベジ(オーガニックとベジタリアン)アレルギー」を吹き飛ばすような出会いがあり、そのうちの一つとして、食肉解体の次のような経験談が紹介されている。「家畜たちは殺される時、悲痛な叫び声をあげるの。肉にはその恐怖や悲しみのエネルギーも含まれていると思う」。ぼくは食肉解体の現場を見たこともなければ経験したこともないけれど、ロシアの作家トルストイが、食肉解体の現場を見に行ってその様子を克明に描写しているのを読んで、それからしばらくはお肉を食べるときに、殺される家畜の様子が頭に浮かんできて美味しく味わうどころではなくなったことがあった。最近はお肉を食べることはめったにないけれど、食べるときは、恐怖や悲しみを与えてまで人間の食としていただく命だということを忘れてはいけないと思っている。
この本にはそういう深刻な話も出てくるけれど、全体としては楽しくユーモラスなトーンで、「自分もこれやってみよう!」とすぐに実行に移したくなるようなエネルギーに満ちている。
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by 硲 允(about me)
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