斑点米カメムシを防除する殺虫剤散布は無意味。農産物規格の見直しを


お米づくりも今年で5年目。幸い、虫にも病気にも悩まされたことがない。

お米の被害というと、カメムシの話をよく見聞きする。うちの田んぼにもカメムシはいて、稲穂にとまっているのを見掛けるが、別に構わない。

稲刈りしたお米は天日干しにし、千歯扱きで脱穀し非電化工房の非電化籾摺り機で籾摺りをする


よく見ると、カメムシが吸ったらしき跡が見えることもあるが、気になるほどではない。

実際、カメムシが吸っていても、食味は変わらないという話もある。

自分で育てて自分で食べる分にはこれで問題ないのだけど、販売するとなると、いろいろ困ったことがあるらしい。

コープ自然派から届いたニュース(「カルテット」Vol. 365)を読んで知ったのだけど、困ったことというのは、カメムシに困らされるというよりも、お米の等級を決める「農産物規格」がおかしい、という話らしい。

カメムシが吸ったお米は「斑点米」と呼ばれ、これが出荷したお米の0.2%以上(1,000粒に2粒以上)混じっていると、2等級以下に格下げにされる、という規定があるとのこと。1,000粒に2粒…うちのお米も、それくらいは確実に混ざっているはず。

等級を下げられると収入が減るので、カメムシ被害を防除するためのネオニコチノイド系殺虫剤を使うことになる。ネオニコチノイド系農薬は、人間の健康被害のほか、ミツバチの大量死の原因にもなっている(カメムシ防除用の殺虫剤がミツバチ被害の原因となっていることを農水省も認めている)。

0.2%混ざった斑点米がとんでもない危険をもたらすというのなら、そういう仕組みになっているのも理解できるが、さらに驚くことに、斑点米が混ざっていたとしても、お米の精米段階で選別機を使って異物と一緒に斑点米をどうせ除去するので、斑点米が混ざっていても混ざっていなくても同じことだという(!)。

どっちみち、商品になるまでに機械ではじかれる斑点米。それを防ぐために、生産者たちの労力や健康、田んぼの生きものたち(殺虫剤の混ざった水が川に流れ、海に流れ、と循環しているので田んぼに限らない)、育ったお米を食べる人たちの健康が犠牲になっているということか。

そんなおかしな話をそのままにしておいていいものか、ということで、2008年に「米の検査規格見直しを求める会」が発足している。同会が2015年に発行した『知っていますか? 斑点米と農薬とミツバチ大量死』がウェブサイトで無料ダウンロードできるようになっている。

このような農産物規格がおかしいと言っているのは、消費者団体や農業者団体だけではなく、県の病害虫担当者からも批判の声があがっている。2015年に、農林水産省が都道府県などを対象に「農産物検査(お米)に関するアンケート調査」を実施している。農水省は調査結果の開示を拒んでいるようだけど、反農薬東京グループとコープが各都道府県に問い合わせ、アンケート調査にどう回答したかを調べたところ、得られた回答22県のうち12県が「着色粒(斑点米)の規定を緩和すべき」と回答していたことがわかったらしい(もっと厳しくすべきと回答した県は0県)。

ぼくが今住む香川県も「緩和すべき」と回答していて、その理由として、「流通段階では問題となっていない一方で、生産段階では防除コストが負担となっている」と回答したとのこと。斑点米が混ざっていても結局は何の問題もない、というのは、県による回答からも裏付けられ、青森県は「着色粒(斑点米)は色彩選別機により除去されて販売されている。農薬の散布回数低減の観点からも緩和すべき」、岩手県は「斑点米カメムシは減収を引き起こすものではない。着色粒の規定をクリアするためだけに農薬が使用されている」と回答したとのこと。

無意味で人間やさまざまな生物や地球環境に有害な影響をもたらすこのような規格がなぜ残っているのだろう(農薬関係の会社の利益を守るため?)。

こうした実態を知る人が増えれば、こんなおかしげな制度もなくなっていくはず。

グリーンピース・ジャパンが、この制度の見直しとネオニコチノイド系農薬の禁止を求める署名を集めていて、一筆書いた(現在、6,021筆)。


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by 硲 允(about me)
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