「じょうぶな頭とかしこい体になるために」(五味太郎 著): 子どもに配り歩きたくなる本

絵本作家として知られる五味太郎さんの『じょうぶな頭とかしこい体になるために』という本を読みました。



google検索で「じょうぶな頭とかしこい体になるために 内容」と打ち込んで調べる人が多いようですが(予測で出でてきます)、たしかに、「なんだろう~」と思うちょっと不思議なタイトルです。一般的には「かしこい頭とじょうぶな体」ですが、アベコベになっています。

本の「はじめに」で、その意味を解き明かしてくれています。

大人の言うことは素直に聞いて、決められたことはきちんと守り、出された問題にはうまく答え、与えられた仕事はだまってやる。決してさぼったり、ごまかしたりはしない。それが「かしこい頭とじょうぶな体」のよい子です。

ふむふむ…たしかにそうとされています…「学校優等生型」という感じでしょうか。

言われたことの意味をたしかめ、決められたことの内容を考え、必要があれば問題をとき、自分のために楽しい仕事をさがし出し、やるときはやるし、さぼりたいときはすぐさぼる。これが「じょうぶな頭とかしこい体」を持った、これもまたよい子です。

ほうほう…いわゆる「地頭がいい」などといわれるタイプでしょうか。他人の期待に応えて他人目線で結果を出すよい子ではなく、自分の頭で考えて行動していくタイプ、でしょうか。

かしこい頭とじょうぶな体を作るための訓練や方法は世の中にいやというほどありますが、頭をじょうぶにし、体をかしこくするためのものは驚くほど不足しているようです。

たしかに…。そもそも、子どもの頃に周りから期待されたり求められたりするのはたいてい「かしこい頭とじょうぶな体」で、「じょうぶな頭とかしこい体」を鍛えたい、鍛えよう、という気持ちを抱くきっかけがその辺に転がっていない。

学校の先生や親や周りの人が「かしこい頭とじょうぶな体」を期待したり求めたりするから、なんとなくその線に沿って努力したり、自分よりも「かしこい頭とじょうぶな体」をもった人を羨ましがったり、ということになりがちですが、自分の人生を自分の好きなように生きていくためには「じょうぶな頭とかしこい体」のほうが役立つことが多いのではないかと思います。

この本は、頭がもっとじょうぶになるための、体がもっとかしこくなるためのトレーニングです。

とのことで、「かしこい頭とじょうぶな体」偏重の頃に読みたかったなぁ、という本です。

ここで扱ったテーマは、現代の子どもの疑問、悩み、希望といったものを調査したいくつものデータの中から、とくに重要だと思われるものを50項目にまとめたものです。

そんなデータがあるんや! そんな調査をいくつもしておきながら、それを受けての対策はなかなか見えてこない…。でも、この本がある!

例えばこんな項目…
  • 何をしたいのか自分でよくわからないんだ
  • 学校には行かなくちゃいけないの?
  • どうして女(男)らしくしなければならないか
  • 担任の先生と気が合わない
  • なぜ友だちと競争しなくてはいけないんだろう
  • ぼく 友だちができないんだ…
  • 「偏差値」ってなんだ
  • ずっと働かないで暮してゆきたい…
  • 原子力発電所はなんで問題になるの?
  • お金がほしい
  • 仕事をしたい!
などなど…。

面白くてぱーっと一気に読んでしまったけど、自分だったらなんて言うか考えてから読むのもよさそう。

子どもの頃にこれを読んでいたら、凝り固まった頭と体がほぐれて、自分の頭で考える錆びついた回路が機能しはじめていたかもなぁ。周りの子どもたちに「これ面白いから読んでみて」ってどんどんあげたくなるような本です。




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by 硲 允(about me)