就活のことなど

春になると、リクルートスーツを着てつまらなさそうに就職活動で移動する人たちを見かける。

つまらなさそうに就職活動をした先に面白い仕事が待ち受けているようには思えず、気の毒に思えてくる。

就職活動先が、それほど熱望して働きたいと思える会社や組織でなくても、面接で落とされると心を傷めたり自信をなくしたりするものだろうと思う。ぼくもかつて少しばかり就活をし、エントリーシートや面接で落とされるとやっぱり多少がっかりした。

就活で落選しても、自分の人格を否定されたわけではない、と考えていたので、それほど落ち込むようなことはなかったが、自分を全面的に否定されたように捉えると、その分、傷も深くなってしまうだろう。

採用する側にしても、必ずしも人格的に優れた人間や極めて秀でた人間を求めているわけではないだろう。今の自分たちの組織にふさわしい、役立つ人間を求めているに過ぎない場合が多いだろうと思う。新卒で就活をしていた頃、ぼくは思考力や仕事のスキルを高めていくことばかり考えていて、時間を惜しんでそのための努力をしていた。就活の面接で、歯磨きをしている時間すらもったいなく、歯を磨きながら英単語を覚えている、といった話をしたのを覚えている。その会社には一次面接で落とされて、なぜだろうと不可解に思っていたのだけど、あとから、その会社に就職した人に話を聞くと、新卒で入ったばかりの社員にしてもらう仕事がなく、本ばかり読まされて退屈している、ということだった。歯磨きの時間すら惜しむような人に適した職場ではないと面接官は考えたのかもしれない。いずれにしても、後から振り返ると、その会社に就職しなくて正解だった。就活は、採用されてバンザイ、落とされて涙、というものでは必ずしもない。相性が合わなかったのだ、縁がなかったのだ、と考えると、いくらか気分もよくなる。

それにしても、雇う側のほうが立場が上で偉そうにして、就活する側が平身低頭、というような心理や構造もおかしい。「圧迫面接」なんていう話も聞くけれど、いきなり偉そうにしてくるようなところで働いてもろくなことがないだろう。新卒の場合はとくになめられがちで、年上の面接官相手だと恐縮してしまいがちなので、あえてちょっと態度をデカくしておくくらいでちょうどいいように思う。

学生を卒業して初めて所属する組織や、職場環境、仕事の内容といったことの影響は後々まで残りやすいように思う。雇う側からすれば、「新卒は使いやすい」と思っているところもあるかもしれない。自分の価値観や性に合わない組織は、なるべくすぐにオサラバするに限る。

マスク社会になり、就活の方法やシステムもだいぶ変化しているのだろう。リモートワークが増え、仕事の環境自体が変化しつつある。案外、どこででも仕事ができることを実感する人が増えれば、住む場所にも多様性が生じ、暮らしを変える人も増えてくるだろう。ぼくは新型コロナ騒動前に都会暮らしに見切りをつけたが、昨今の都会暮らしはさらに厳しく、もっと人口密度の低い場所で暮らしたいと思う人がさらに増えてくるように思う。

話はあちこち飛ぶけれど、リモートワークも地方のほうがしやすいように見える。東京にいた頃は、カフェで仕事をしようにも人が多く、話し声がうるさすぎたり、長く居づらいのですぐに別のカフェに移動したりして大変だったが、香川の大手チェーンのカフェに行くと、広々とした席で気兼ねなくパソコンを叩いている客をよく見かける。最近はアクリルバーで仕切られ、ちょっとした個室のようにもなっている。

就活にはあまりいい思い出がないけれど、いろんな世界をちょっとずつ垣間見るには面白かった。他のエピソードは下の記事にも。

就活の思い出と、若者の労働力を搾取するための就活の仕組みについて。