「(作家に)つくらせました」。器屋店主の上から目線?

もうだいぶ前の話だけど、東京で暮らしていた頃、時々訪れていた器屋さんでのこと。

そこの店主さんはお話好きのようで、器や作家さんについて、いろいろ教えてくれました。腰が低く穏やかそうなその店主さん、話の途中で、作家さんに「つくらせました」と言ったように聞こえて、聞き違えかなぁと思って、それほど気にせずに流していたのですが、一緒にいた相方に後から確認したところ、やっぱりはっきりと「つくらせました」と言っていたようで、びっくりしました。

「お客様が神様」とまではいかないけれど、客は上の立場、という商習慣のようなものが昔から残っているのでしょう。それにしても、「つくらせました」は、作家さんよりもお店側のほうがずいぶん立場が上のような感じがして、ずいぶん違和感がありますし、「つくらせた」ような器は欲しくないなぁと思ってしまいます。慣例的な「言い回し」の問題で、作家さんを従えているつもりは毛頭無いのだと思いますし、話の内容からしても、作家さんへの敬意が伝わってきたので、違和感はありますがそれほど嫌な気はしませんでした。

器屋さんはいまだにそんな言い方をするところが結構あるのかなぁと思って、googleで検索してみましたが、そんな話は簡単には出てきませんでした。ほかの器屋さんでも、お店の方が作家さんに命令したり従えたりしているような言い方をしているのを聞いたことがありませんし、もしかすると、東京のあのお店のあの店員さん独自の「こだわり」なのかもしれませんが、よくわかりません。

そのお店で買った器を使っていると、時々「つくらせました」の一言が脳裏に蘇ってきて、くすりとしてしまいます。このことを作家さんに伝えたら、もうつくってくれなくなるかもなぁ…と余計なことも考えてしまいます。


【関連記事】

by 硲 允(about me)