まんのう町を自転車で移動していると、こんもりとした小さな森が見えて気になった。用を済ませた帰り、自転車を止めて看板を見ると、「岩の本(もと)」と「矢原(やはら)の花梨」と書かれている。この道の南側を古来「岩の本」と呼んでいるらしい。
昔、弘法大使が満濃池の修築のために讃岐の国に来た際、笠をとって矢原の屋敷へ入ったという。そのときに持参した花梨の木を邸内に植えたとのこと。その花梨はのちに大きく育ったがやがて枯れ、枯木は大正末期まで残っていたという。
その後、その花梨の木の根元から新芽が出て、若木が今も育っているとのこと。
矢原邸の森へ自転車を走らせた。
空海が821年に矢原正久の屋敷に滞留した際、記念に御手植えしたとされる花梨があり、現在ある花梨は二代目だとされているという。
これがその花梨の木らしい。花梨はまんのう町の「町木」になっている。
花梨が実を成らす時期だが、実はついていなかった。
その周辺にも花梨の木が立ち並ぶ。
一つだけ実を発見。まだ未熟だが、鼻を近づけるといい香りがした。
せっかくなので森の中を散策してみることにした。
付近の道は舗装されて、住宅が並ぶが、森の中は別世界。
昭和60年に立てられた看板によると、ツブラジイ、ヤマモモ、タブノキなどの常緑広葉樹のほか、平野部では水らしいツガの巨木があるという。また、クチナシ、ヤブニッケイ、ネズミモチ、ハリギリなどの亜高木や低木、それにイタビカズラやフユズタなどのつる性植物が繁茂しているという。
時々は手入れされている様子だが、散策用の通路があるわけではない。
植物をゆっくり観察したかったが、蚊がまとわりついてくるので退散。
小さな森といえど、植物の世界は壮大。普段、人が足を踏み入れることはほとんどなさそうだが、小まめに手入れすれば、気持ちのいい憩いの場になりそうに思った。
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