『子どものむし歯予防は食生活がすべて ー4人の子どもに歯を磨かせなかった歯医者の話』(黒沢誠人、幕内秀夫 著)という本を読んだ。
歯科医の黒沢さんはかつて、虫歯予防には歯磨きの徹底が第一と考えていたそうだが、歯磨きがきちんとできていなくても虫歯ができる患者とそうでない患者がいるのを目の当たりにしているうちに、「歯を磨くことで、本当にむし歯を予防できるのだろうか?」「歯を磨かないと、本当にむし歯ができるのだろうか?」という疑問が湧いてきたという。
その頃、本書の共著者で管理栄養士である幕内さんが主催する食生活に関する講習会に参加する機会があり、そこで、ウェストン・A・プライスさんというアメリカの歯科医の研究結果を知って強い衝撃を受けたという。プライスさんの研究は、先住民族が現代文明に触れ、食生活が近代化すると、口腔やあごの構造がどう影響を受け、劣化するか、というものだった。伝統的な食事を守っている人たちと、近代的な食事をとるようになった人たちを比べると、虫歯の発生率が大きく違っていたという(本書でもその違いが写真で紹介されており、たしかに衝撃的である)。
それを知り、歯科医としての好奇心から、ご自身のお子さんたちで試してみるしかないと考え、子どもたちに、「歯磨きは今日からしなくていい。その代わりに、伝統食を食べるようにする」と言ったという。
一概に伝統食といってもいろいろだけど、実践されたのは、ご飯、みそ汁を中心として季節の野菜や魚介類中心。そして、戦前の食事と幕内さんの以下の「食生活改善の10ヶ条」を参考にされたという。
具体的にはさらに次のように実践されたという。
・ご飯をたくさん食べて(年間一人あたり100キロ)、おかずは少なめにする
・パン食は日曜日のお昼だけ
・飲み物は水かお茶に
・おやつはサツマイモやジャガイモ、とうもろこし、季節の果物など(そういったものが無いときは干芋やせんべい)(ただし、遠足、運動会、クリスマス、正月、旅行など特別な日は何を食べてもよしとする)
子どもたちの歯を年に2回、歯科衛生士が歯垢を取り除いて定期検診し続けたところ、4人の子どもさんたちは中学校を卒業するまで虫歯ができなかったという。それに、お子さんたちの顎が両親よりも大きく成長したことが紹介されている。
黒沢さんがお子さんたちに歯磨きをさせなかったといっても、それは実験のためであり、歯磨きはやはりしたほうがよく、お子さんたちにも中学校に進学した段階で「歯磨きなし」を終了させたという。歯磨きをせずに歯垢がたまっている状態を続けると、将来的には必ず歯周病のリスクが生じるとのこと。
また、食事に気をつけて口腔内を中性の状態に保つことだけで虫歯を回避できるのは子どもに限り、大人は歯肉が後退して歯根が露出していたあり、歯の表面のエナメル質が磨耗して象牙質が露出している状態であれば細菌が歯の中に簡単に侵入できるため、虫歯や歯周病の予防のためには歯垢除去に力を入れなければならず、歯磨きは必須だという。
黒沢さんは、次のような「むし歯予防3箇条」を提案されている(詳しくは本書で)。
これらを実行すると、虫歯だらけで来院した子どもでも、新しい虫歯はピタリとできなくなり、その後も虫歯ができ続ける子どもはまずいないという。
この本は、歯のことや虫歯を防ぎ健康に暮らすための食事のことがわかりやすくコンパクトにまとまっている。砂糖を一切摂ってはいけないとか、そんな無理な方法でもない。砂糖や添加物だらけの不自然な食事は中毒性があり、そのような食生活に切り替えるにはちょっとした(人によってはかなりの?)努力が必要だと思うけれど、歯が健康かどうかで、長い一生の食事の喜びや日々の快適さがまるで違ってくる。紹介されているのは、虫歯をつくらずに健康に生きていこうという強い決意さえあれば、実行しやすい実践的な方法だと思う。お菓子を食べ続け、ジュースを飲みまくっていた子どもの頃に知りたかった内容がたくさん。伝統食から工業製品中心の食生活が普通になった現代社会で健康にサバイヴしたい方にオススメの一冊。
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by 硲 允(about me)
twitter (@HazamaMakoto)
歯科医の黒沢さんはかつて、虫歯予防には歯磨きの徹底が第一と考えていたそうだが、歯磨きがきちんとできていなくても虫歯ができる患者とそうでない患者がいるのを目の当たりにしているうちに、「歯を磨くことで、本当にむし歯を予防できるのだろうか?」「歯を磨かないと、本当にむし歯ができるのだろうか?」という疑問が湧いてきたという。
その頃、本書の共著者で管理栄養士である幕内さんが主催する食生活に関する講習会に参加する機会があり、そこで、ウェストン・A・プライスさんというアメリカの歯科医の研究結果を知って強い衝撃を受けたという。プライスさんの研究は、先住民族が現代文明に触れ、食生活が近代化すると、口腔やあごの構造がどう影響を受け、劣化するか、というものだった。伝統的な食事を守っている人たちと、近代的な食事をとるようになった人たちを比べると、虫歯の発生率が大きく違っていたという(本書でもその違いが写真で紹介されており、たしかに衝撃的である)。
それを知り、歯科医としての好奇心から、ご自身のお子さんたちで試してみるしかないと考え、子どもたちに、「歯磨きは今日からしなくていい。その代わりに、伝統食を食べるようにする」と言ったという。
一概に伝統食といってもいろいろだけど、実践されたのは、ご飯、みそ汁を中心として季節の野菜や魚介類中心。そして、戦前の食事と幕内さんの以下の「食生活改善の10ヶ条」を参考にされたという。
1、ご飯をきちんと食べる
2、発酵食品を食べる
3、パンの常食はやめる
4、液体でカロリーを摂らない
5、未精製のご飯を食べる
6、副食は季節の野菜を中心に
7、動物性食品は魚介類を中心に
8、砂糖、油脂の摂り過ぎに注意
9、できる限り、安全な食品を選ぶ
10、食事はゆっくりと、よく噛んで
具体的にはさらに次のように実践されたという。
・ご飯をたくさん食べて(年間一人あたり100キロ)、おかずは少なめにする
・パン食は日曜日のお昼だけ
・飲み物は水かお茶に
・おやつはサツマイモやジャガイモ、とうもろこし、季節の果物など(そういったものが無いときは干芋やせんべい)(ただし、遠足、運動会、クリスマス、正月、旅行など特別な日は何を食べてもよしとする)
子どもたちの歯を年に2回、歯科衛生士が歯垢を取り除いて定期検診し続けたところ、4人の子どもさんたちは中学校を卒業するまで虫歯ができなかったという。それに、お子さんたちの顎が両親よりも大きく成長したことが紹介されている。
黒沢さんがお子さんたちに歯磨きをさせなかったといっても、それは実験のためであり、歯磨きはやはりしたほうがよく、お子さんたちにも中学校に進学した段階で「歯磨きなし」を終了させたという。歯磨きをせずに歯垢がたまっている状態を続けると、将来的には必ず歯周病のリスクが生じるとのこと。
また、食事に気をつけて口腔内を中性の状態に保つことだけで虫歯を回避できるのは子どもに限り、大人は歯肉が後退して歯根が露出していたあり、歯の表面のエナメル質が磨耗して象牙質が露出している状態であれば細菌が歯の中に簡単に侵入できるため、虫歯や歯周病の予防のためには歯垢除去に力を入れなければならず、歯磨きは必須だという。
黒沢さんは、次のような「むし歯予防3箇条」を提案されている(詳しくは本書で)。
1、おやつは時間を決める
2、夕食前の1時間は飲食しない
3、甘い飲み物を冷蔵庫に買い置きしない
これらを実行すると、虫歯だらけで来院した子どもでも、新しい虫歯はピタリとできなくなり、その後も虫歯ができ続ける子どもはまずいないという。
この本は、歯のことや虫歯を防ぎ健康に暮らすための食事のことがわかりやすくコンパクトにまとまっている。砂糖を一切摂ってはいけないとか、そんな無理な方法でもない。砂糖や添加物だらけの不自然な食事は中毒性があり、そのような食生活に切り替えるにはちょっとした(人によってはかなりの?)努力が必要だと思うけれど、歯が健康かどうかで、長い一生の食事の喜びや日々の快適さがまるで違ってくる。紹介されているのは、虫歯をつくらずに健康に生きていこうという強い決意さえあれば、実行しやすい実践的な方法だと思う。お菓子を食べ続け、ジュースを飲みまくっていた子どもの頃に知りたかった内容がたくさん。伝統食から工業製品中心の食生活が普通になった現代社会で健康にサバイヴしたい方にオススメの一冊。
【関連記事】
by 硲 允(about me)
twitter (@HazamaMakoto)