水銀を使った歯の詰め物「アマルガム」に注意。「自然派」とされる歯医者で使われていることも

「アマルガム」という言葉は、数年前まで聞いたこともなかった。ところが、自分の歯に、そのアマルガムが使われていた。一般的な歯科医院では、自分の知らないところで何をされているかほとんど知らされないという恐ろしさがある(事前に治療方針や治療方法をちゃんと話し合い、説明してくれる歯医者さんもいるけれど)。

歯の治療で使われる「アマルガム」というのは、要は、水銀を含む詰め物(インレー)のこと(銀、錫、銅、鉛の粉末と無機水銀との合金らしい)。水銀の比率は50%

重金属である水銀を口の中に入れていいものか? 問題ないと言う歯科医もいるが、非常に問題があると言う歯科医もいて、その危険性を指摘する研究もある。

日本では、「水銀に関する水俣条約」の発効を見越して、日本歯科医師会が平成25年に「歯科用アマルガムの使用に関する見解」を発表し、「我が国は、様々な歯冠修復材料に恵まれており、今後は、水銀汚染対策の観点から、歯科用アマルガムの廃絶に向けて取り組んでいく」と宣言している。いまだにアマルガムを使っている歯科医院もあるけれど、最近ではおそらくほとんど使われていないと思う。

日本以外の国ではどうなっているかというと、スウェーデンやイギリスでは使用禁止、ドイツ、ノルウェー、カナダでも使用が制限され、アメリカでもアマルガム関連の訴訟が増えているらしい。

口の中に詰められたアマルガムは唾液によって腐食し、ものを食べるときの摩擦熱で水銀を含む蒸気を発し、体内に入った水銀は、皮膚炎、頭痛、肩こり、腰痛、不眠、イライラ、めまい、アレルギーなどを引き起こす可能性があると指摘されている。

『口の中に潜む恐怖』(ダニー・スタインバーグ著)という本では、口の中に詰められたアマルガムを除去することで、アレルギー、頭痛、不整脈、披露、胃腸障害、皮膚炎、不安感、イライラなど、多くの症状が8〜9割も改善したことが示されている。



口の中の金属がアンテナの役割をして電磁波の影響を受けやすくなり、電磁波過敏症の原因になることもあると言われている。

水銀の害は、アマルガムを詰められた人の身体だけにとどまらない。それを使用する診療所の歯科医や歯科衛生士も治療の際に水銀を吸い込んでしまう恐れがある。

アマルガムの使用説明書では、保護具として歯科医が防護マスク、防護メガネ、ゴム手袋を着用するように勧めているらしい。診療所の排水から水銀を除去する機械を導入していなければ、周辺が汚染されてしまう。

食べものを噛んでアマルガムが削られると、排泄物を経由して環境に放出される。スウェーデン全体で詰められているアマルガムの水銀は40トンに上り、そこから年間にして約100キロの水銀が排泄されているという。アマルガムを詰められた人が死んで火葬されると、そこでも水銀が周辺に流出する。

「そんな大げさな。歯医者で使われる水銀の量なんてしれたもんだろう」と思う方もいるかもしれないけれど、国連環境計画の発表によると、2005年の世界の水銀用途において、歯科用アマルガムは全体の10%にも上る(!)。電池も同じく10%。電池の水銀の話はよく聞くし、その危険性が一般的に認知されているが、同じ量の水銀が体内に入れられていることは、ほとんど知られていない。世界保健機構は2005年に、「水銀はどんなに微量でも有害である」と発表している。

他によさそうな詰め物や被せ物があるのだから、危険性が指摘されているアマルガムをわざわざ使うリスクを冒す必要はないと思う。

歯の治療を受けるときは、その医院でアマルガムを使用しているかどうか、念のため確認しておいたほうがいいと思う。「自然歯科」として知られている香川の歯科医院に行き、初診料数万円の検査や食事指導を受けたが、初診のときの話で、ここでは奥歯の詰め物にアマルガムしか使わないことを知り、数万円をムダにしてしまったことがある。

その歯科医に、アアルガムは詰めたくないと話すと、なぜか砂糖を持ち出してきて、砂糖のほうがよっぽど悪いと言われた。砂糖が虫歯の原因になるのは分かるが、それは別の話で、悪いものは両方とも止めたらいいのではないかと話した。

歯の詰め物には、保険対応のものではコンポジットレジンや銀合金インレーが一般的に使われる。その歯科医でなぜこれらを用いないかというと、コンポジットレジンは、詰めた後で収縮し、歯と詰め物の隙き間に虫歯ができやすいという話だった。それはここの診療所で試してみて分かったことなのかと訊ねると、そうではなく、他の医院での治療経過を見てのことだという(自ら試しもせず、アマルガムのほうがいいと言い張るのは不思議だった)。この診療所では、砂糖を摂らず、パンや果物も週に一度しか食べないように指導を徹底している。そういう食生活を送った場合、レジンの隙き間にどの程度虫歯ができるのかは、実証されていない。アマルガムの場合は歯との間に隙間ができないのかというと、アマルガムは3年以内に劣化の兆候を示し、10年後には平均で総量の約73%が減少するとの報告もある。

その歯科医で、アマルガムの水銀は無機水銀だから大丈夫だとも言われたが、アメリカ環境保護庁の発表によると、無機水銀は微生物によって毒性の高いメチル水銀に変化するといわれている。そう伝えたが、科学者の言うことはアテにならないとのことで、まともな議論にならなかった。

その歯科医は長年アマルガムを使ってきたが、患者さんに何の問題も見られず、みんな健康を回復していると言われた。この歯科医院では、食事全体の6割以上を玄米にし、無添加、無農薬の食材を使うなど、念入りに食事指導をしている。アマルガムの悪影響よりも、食事を変えることによる免疫力や排出力の高まりが上回れば、全体的に健康が回復に向かう、ということはあると思う。しかし、だからといってアマルガムを使っていいとは思わない。アマルガムによる影響の程度は人それぞれであり、症状が多岐に渡るので、どこに影響がでているかは分からない。アマルガムを使わずに食事を改善すれば、もっと体調がよくやる、という可能性もある。

科学者の言うことはアテにならないと言ってまともな議論もしてもらえないのに、極めつけは、大丈夫だろうからアマルガムを入れてみてから考えたらどうですか、と言われて、その歯科医に対する不信感はピークに達した。そうなってからでは遅いと言って断り、もちろん、ここでは治療を受けないことにした。

ぼくの口の中にはまだアマルガムが入ったままだけど、近々、別の歯科医院で外してもらう予定。外すときも注意が必要で、何の防御もなく削るとアマルガムの破片や水銀ガスが飛散(蒸散)して危険なので、その歯以外を覆うラバーダムや、口腔外バキュームなどの対策をしてもらえるところで治療を受けるのがいいと思う。

アマルガムを外した後で何か変化を感じたらまたご報告したい。

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<関連書籍>


本当に怖い歯の詰め物―誰も知らなかった病気の原因(ハル・ハギンズ 著)


その銀歯がメタボと心臓病の原因だった―口の中に水銀があった!!(マイケル・ジフ、サム・ジフ 著)


口の中に毒がある―その安全な除去法と健康回復(釣部人裕 著)


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by 硲 允(about me)
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