宮崎県で杉林の下刈りの代わりに無人ヘリで除草剤散布するとのニュースを見ての私感。

宮崎県が、人工林の下刈りを省力化するために無人ヘリで除草剤を散布する計画を進めているとの記事を読んだ。
重労働の下刈り省力化=林業に無人ヘリ-宮崎県(JIJI.com)

宮崎県は、杉の丸太の生産量が日本一らしい。杉の植林を行う際、苗木を植えてから6年間、下刈りを行う必要があるという。

ぼくも森林活動で、夏はヒノキ林の下刈りの作業をしている。刈払機やチェンソー、手ノコを使って、ヒノキ以外に生えてきた雑木や笹、シダなどを刈る。いい運動になり、時々する分にはなかなか楽しく爽快な作業ではある。

ところが、全国的に林業に関わる人は不足しているようで、宮崎県でも、林業に携わる人は1995年の4,200人から2019年には2,200人まで減ってきているらしい。1人当たりの労務負担も膨らみ、下刈りの省力化が不可欠との判断が下されたらしい。

ぼくはこのニュースを見てぞっとした。

下草を刈るのと、除草剤で枯らすのとでは、全く異なる作業である。目的の植物(この場合は杉)以外を地表からなくす、ということでは一見似ているが、除草剤を使用すれば、地表や地中に住む様々な生きものに影響を与え(「刈る」よりも多くの命が失われるだろう)生物多様性は失われるだろうし、土が痩せて土砂流出が起こりやすくなる可能性も考えられる。うちの近所で夏になるとしょっちゅう除草剤を撒かれている場所は、土がボロボロになって歩くとすぐに崩れる。森の中でも同じようなことが起こるだろう。山林と河川は直接つながっている。水を汚すことにもなるだろう。

計画されている除草剤が、粒状のものか、噴霧するものか、どのようなものかは分からないが、周辺地域への影響も心配だ。ぼくは将来的に山暮らしをしたいと思っていて、場所を検討していて、宮崎県の綾町は町全体で有機農業に取り組んでいるということでちょっと気になっていたが、このニュースを見て宮崎県は選択肢から外れた。除草剤を撒く無人ヘリが飛び交っているような場所には住みたくない。

これから新しく林業の世界に入っていく人の中には、なるべく自然と調和した仕事に興味を持っていたり、生態系を守ることを大事にしたり、伝統的な技術を重んじる人も多いのではないかと思う。

森林や林業に関心のある若者は増えてきているのではないかと思う。しかし、林業で生計を立てていくのはなかなか厳しいこともあって、担い手が不足しているのだろう。森林組合に務めていたけれど家族が増えて林業の収入では家計を支えられなくなって転職した、というような話を聞くこともある。木材生産というのは暮らしを支える大事な仕事なのに、充分な収入を得られないというのは、産業構造自体に問題があるのだろう。充分な収入を得られる仕組みをつくるにはどうすればいいのだろうか。

根本的な解決は一気には難しいと思うけれど、解決の過程においても、森林やそこに棲むすべての生きもの、その恵みを受け取る人間…あらゆる存在にとって最もよい選択肢は何なのか、よくよく考えていく必要があると思った。

長期的に見て、林業に携わる人を増やすには、林業の仕事を魅力的なものにしていく必要があると思う。これからの若い人たちはさらに、自然、環境、人間などを豊かにする仕事に惹かれる傾向が高まっていくのではないかと思う。これだと思う仕事を見つければ、フットワークが軽い若者は遠く離れた場所にでも移住する。各地域でそんな仕事を増やしていけば、人不足の問題も徐々に解決に向かうのではないだろうか。

ちなみに、この無人ヘリは、全地球測位システム(GPS)を搭載し、誤差6~12センチの位置情報を持つ準天頂衛星を活用するとのこと。宮崎大学や林業関係の研究機関、ヤマハ発動機などと連携して研究を進めていて、2020年度の実用化を目指しているらしい。実現すれば全国初らしいが、あまり誉れにはならないだろう…。


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by 硲 允(about me)
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