『はなちゃん12歳の台所』(安武はな 著)に心洗われる。エッセイのお手本のようなエッセイ

『はなちゃん12歳の台所』(安武はな 著)という本を読みました。



安武はなさんは5歳の頃、闘病中の母親に味噌汁のつくり方を教わり、母親が亡くなられたあとも料理を続け、つらいこともたくさんあるなか、父親の安武信吾さんと乗り越えてこられたそうです。

「はなちゃんのみそ汁」という映画が一時すごく話題になっていたそうですが、ぼくは全然知らず、この本を相方に教えてもらって初めて知りました。

朝の味噌汁づくりは5歳のときからの日課で、毎朝5時に起きて、朝ごはんをつくっていたそうです。味噌汁の出汁に使うかつお節を自分で削るところから! 

そして、12歳のときから、信吾さんの高血圧を心配して、夕食もつくり始めたとのこと。

この本は、料理家のタカコナカムラさんと一緒につくられています。タカコナカムラさんは、食や環境、暮らしをまるごと考える「ホールフード」を教えていて、はなさんの母親の依頼で福岡でも教えることになり、当時、信吾さんがタカコナカムラさんとはなさんの母親のレシピ集をつくろうと考えていたそうで、それを7年の年月が経たあと、はなさんが引き継ぐかたちになったそうです。

タカコナカムラさんからはなさんへのメッセージの一部に、こう書かれています。
パパとはなちゃんの暮らしに笑いが途切れないように。ぎくしゃくする関係にならないように。「料理って楽しね」と、はなちゃんが感じるように。そんな思いでママは「みそ汁の作り方」をはなちゃんに教えたのではないかと、タカコさんは思っています。
この本を読めば、料理がいかにそんな役割を果たしてきたかが伝わってきます。

タカコナカムラさんはこうも書かれています。
「美味しいね~」の笑顔がゴールだね。親子、恋人、友だちが、一緒に料理を作り、一緒に食べる。それだけで、なんだか分かり合えるような気がする。
どんな美味しい料理も、一人でつくって一人で食べるより、誰かとつくって「美味しいね~」と言いながら一緒に食べると何倍も美味しくなる、と常々思います。

この本を読むと、料理の大切さを、改めて噛みしめたくなります。

本では、はなさんのエッセイがあって、それにまつわるレシピが一品紹介され、その連続です(途中、レシピがセットになっていないコラムもあります)。

はなさんのエッセイが何ともすばらしい! 読んでいて気持ちがあったかくなる文章で、ユーモアもあって何度も笑わされました。こう書いたら読者はこう感じるだろう、と考えるような作為的なところはまったく感じられず、思うままに書いて、それでいて読み手の興味をひきつけ、心を温める文章で、エッセイのお手本のようなエッセイだと思いました。

映画やドラマ(にもなったようです)をみた人から、小さな子どもを台所に立たせるなんて「毒親」だ、といった感想も寄せられているそうですが、この本を読むと、それが勘違いだということがよくわかります。信吾さんも料理がお好きで家でもよくつくられているようで、はなさん絶賛の「パパのチャーハン」のレシピも紹介されています。

子どもの頃に、家で自分の役割(暮らしの仕事)があるのは大事なことだなぁと、改めて思いました(ぼくは12歳の頃、家ですることといえばゲームと(時々)勉強くらいで、親に完全に甘えきっていましたが)。嫌がる子どもに無理やり家事をさせるのは虐待になりかねませんが、自分でやると決めた暮らしの仕事を毎日して、それを喜んでもらえて自分の喜びにもなるという経験が子どもの頃にできるのは貴重なことだと思います。

本で紹介されているじゃじゃ麺をさっそくつくってみました。


本のレシピは「きび麺のじゃじゃ麺」で、雑穀のうるちきびにつなぎとしてタピオカでんぷんを使用している麺があるそうですが、うどんや中華麺でもいいとのことなので、稲庭うどんでつくってみました。

甘酒や自家製味噌を使ったタレが高野豆腐に染み込み、ショウガの辛さが効いて、夢中で食べてしまう美味しさ! うちでも定番メニューになりそうです。


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by 硲 允(about me)
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