ワインの酸化防止剤(亜硫酸塩)について

たいていのワインのラベルを見ると、「酸化防止剤(亜硫酸塩)」という表記がある。

ものによって亜硫酸塩がたくさん使われていて、少し飲むだけで頭痛がしてくるワインもあるので用心している。オーガニックのワインは、ブドウの農薬を使いたくないくらいだから、亜硫酸塩の使用も控えめにしていることが多いのか、飲んでも頭がいたくならないワインが多いが、健康や安全へのこだわりがなさそうなワインは亜硫酸塩をボコボコ入れている可能性があるのでうかつに飲めない。

オーガニックのワインでも、亜硫酸塩不使用のものはお店であまり見かけない。よく行くお店で、フランス産のワインで亜硫酸塩不使用のものを見つけ、1本買って飲んでみたら味もよかったので、後日、まとめ買いしてきた。

亜硫酸塩は、身体に入れるには不自然なもので頭がいたくなるものだという認識くらいしかなかったが、「自然派ワイン入門」(イザベル・レジュロン [著], 清水玲奈 [翻訳])という本に詳しく書かれていて勉強になった。




アメリカでは1988年以降、EUでは2005年以降、1リットルあたり10ミリグラム以上の亜硫酸塩を含むワインにはラベルに「亜硫酸塩が含まれる」と表示することが義務付けられたという。

ところが、このラベルだけでは実態がよくわからない。

というのも、人工的に亜硫酸塩を添加しなくても、ワインは醸造の過程で酵母が自然に少量の亜硫酸塩をつくりだすという(通常は1リットルあたり20ミリグラム以下)。自然に発生した亜硫酸塩が少量含まれている場合でも、人工的に大量の亜硫酸塩を添加した場合でも、「亜硫酸塩が含まれる」という表記しかなければ購買者は判断できない。

人工的に添加される亜硫酸塩のほとんどは石油産業の副産物であり、化学燃料を燃やし、硫黄を含む鉱石を精錬することによって製造されるという。こういうものが、ぶどうの酵母によって自然に生成される亜硫酸塩と同じものだとは思えない。

そもそも、亜硫酸塩をなぜ人工的に添加するかというと、亜硫酸塩には抗菌作用があるので、ブドウに付いている野生酵母やバクテリアを無力化させたり排除したりして生産者が選択的に酵母を使ったり、装置を消毒したり、瓶詰め後のワインを安定させたりするためらしい。

添加された亜硫酸塩は、当然ワインの味にも変化をもたらし、スロベニアとイタリアの国境で自然派ワインをつくるサシャ・ラディコン氏は、「二酸化硫黄がほんの少し入っているだけでも、違いは分かります。そのせいでワインがさえない味になるのです」と語っているという。

ワイン業界では、亜硫酸塩は古代から使われてきたと語られることが多いそうだが、保存料として広く使われるようになったのは18世紀以降、とりわけ19世紀のことだという。

ケルン(ドイツ)では15世紀に、亜硫酸塩は「人間の天性をだまし、飲酒者を苦しめた」として完全に禁止されることになったそうで、ほとんどのワインが亜硫酸塩入りの昨今、どれだけの人間の天性がだまされていることか…。

亜硫酸塩の使用について、もっと正確に表記してもらいたいものだ。人工的に添加したものなのか、自然に発生したものなのかの区別すらつかないのは困りものだと思う。添加した場合、どれくらいの量を添加したのかも表記してほしい。今のところは、亜硫酸塩不使用のワインを選ぶか、オーガニックのもので、生産者のこだわりが見えるものを買ってみて自分の舌や身体全体で判断するか…。少なくとも、亜硫酸塩が大量に使用されているものは頭が痛くなるのですぐにわかる。ワインが身体に合わないと思っている方もいると思うけれど、それはワインというよりも亜硫酸塩のせいかもしれない。この本には、自然派やオーガニックの生産者で、セラーで介入する度合いの低い生産者のリストも掲載されている。


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by 硲 允(about me)