鳩五輪

早朝、田んぼへ草刈りに行くと、すぐそばの電線に鳩が40羽ほどとまっていて、びっくりした。うちの庭で生まれた鳩たちか? 鳩が庭に2回ほど巣をつくり、雛が生まれ、大人になり、庭や近所で楽しそうにしている。窓の外の高い木にとまって、家の中の様子を見ていたり、最近は、庭で咲いたひまわりの種を黙々と食べている。

翌日も引き続き、草刈りをしに田んぼに向かって歩いていると、同じ電線に、前日の何倍もの鳩がとまっていた。あまりに多いので圧倒されて、立ち止まった。その数を数えてみると、50羽まで数えられたが、数えている途中で飛んでいってしまう鳩もいるので、正確に数えるのはあきらめた。数えたところの6倍はいそうなので、300羽はいるだろうか。庭で生まれた鳩たちの親戚一同なのか、この近隣の鳩たちも集まってきたのか。

草刈りをしている間、鳩たちは思い思いに時間を過ごしていた。ちょっと飛んでいって戻ってくるのもいれば、ずっと電線にとまっているのもいる。ボーッ、ボーッ…と静かな声を出しているが、「ポポーッ」とは鳴かない。鳩たちは近所迷惑を考えているのか、早朝から大声で鳴かない。田んぼの草刈りが終わり、畑でミニトマトとハーブを収穫した頃には、鳩たち全員、どこかへ飛び去っていた。数百羽いたのがゼロ羽になったのを見ると、幻だったのではないかと思えてこないこともない。

その翌日も、何百羽も集まってきた。ぼくが歩いて田んぼに到着するのと同時に飛んできた群れもあった。挨拶に来たのか、見学に来たのか。たまたま朝のこの時間の鳩会議なのか…。

庭でひまわりの種を熱心についばんでいる鳩を見るのも可愛い。オリンピックを見ているより、鳩を見ているほうが面白いと相方が言った。ぼくもそう思った。そもそも、ぼくらはテレビを見ないし、テレビは無いので、オリンピックは全く見ない。昔から興味がなかった。最近は勝ち負けとか競争とか嫌いになり、ますます見る気がしなくなった。

そういえば、以前、気分が沈んでいるときに、たくさんの鳩が集まって一斉に舞い、まるでパレードのような光景を見せてくれたことがあった。あれは鳩のパフォーマンスなのか、なにか実用的な意味があるのかどうか…。

早朝に田んぼに何百羽も集まった鳩たちは、何を考えているのだろう…観察してみても、わからない。世の中、身近なところに神秘や不思議というものがまだまだたくさん残されているものだと思う。宇宙まで飛んでいきたいとは思わない。鳩との付き合い方すら、ろくにわかっていないのだから。