『バイトやめる学校』(山下陽光 著)を読んで。

『バイトやめる学校』(山下陽光 著)という本を読みました。



山下陽光さんのことは、『ズームイン、服!』(坂口恭平 著)という本で知りました。「途中でやめる」という、ぶっとんだファッションブランドを主宰されているデザイナーです。「途中でやめる」のウェブショップを見ると、自由なデザインの服に刺激を受けるとともに、値段設定の安さに驚かされます。その背景についても、この本を読むとわかってきます。

「バイトやめる学校」というタイトルが、また面白いです。どうやったらバイトをやめて自活して生きていけるのか、というヒントがいろいろ書かれています。

ぼくも大学を卒業したあと、東京で小さな会社で働きつつバイトもしながらなんとか暮らしていました。その後、完全にフリーになり、バイトを増やし、家賃を支払うのもやっとの生活でしたが、お金のかからない暮らしにシフトしながら少しずつ生活費を減らし、バイトも減らし、なるべく気の進む仕事を少しずつ増やしながら、自分なりにちょっとずつ暮らしをよくしてきました。

幸い今では、バイトに行かずに暮らせるようになり、自分の自由に過ごせる時間をかなり取り戻しました。とはいえ、時々不安になって、バイト情報誌を手に取り、パラパラと眺めるようなこともあります。そして、気の進まない仕事がずらりと並んでいるのを確認し、バイトはしたくないなぁ、と思うわけです。バイトはバイトでも、好きなお店とかで、気の合う人たちと一緒に楽しい仕事ができるようなバイトならいいかもしれませんが、そういうラッキーな仕事に巡り会えるケースはごく一部でしょう。

ぼくは学生時代に英語の勉強が好きになり、一時期は狂ったように英語の勉強ばかりしていたので、その時から養ってきたスキルとご縁のおかげで、退屈で気の進まないバイトに行かなくて済んでいます。

好きなことを突き詰めていけば、自活への道が開けてくる可能性があるとはいえ、そう簡単なことでもありません。そう簡単ではないことは、この本を読んでも伝わってきますが、山下陽光さんご自身がどういう考えや想いで、どう工夫し、どう取り組んでこられたのか、あけすけに書かれていて、読んでいてそのエネルギーが伝わってきて、なにか行動を起こしたくなる本です。

前書きから一部、引用させていただきます。

この本に書いてあることは簡単です。社会から需要がある、自分の特技を安い値段で請け負って、少しだけ稼ぐ。人を雇えるようになってきたらメチャクチャ高いお金を払って、自分は少しだけもらう。自分に向けた反資本主義の実践をやれば、必ずおもしろい方向に向かっていくし、未来は明るいやんけ! とほんの少し輝き始めます。(p. 7)


「自分の特技を安い値段で請け負う」というのが、山下さん流。いつも忙しくされているようですが、自分の儲けは少なくし、手伝ってくれる方に高く支払うのが楽しいといいます。なかなか真似できないことですが、こういうお金の制度設計をすることで、資本主義の世の中で他社が簡単に真似できない立ち位置を築いているようです。

好きなことや得意なことを仕事にする、といっても、そう簡単に自活できるわけではありません。そこをもっと掘り下げて、どう考えていけばいいのか、具体的なアドバイス例が載っていて、面白いです。みんなにも嫌なバイトから解放されてほしい、という思いやり、サービス精神が感じられます。方法論としてたとえば、他の人は嫌がるけど自分はそんなに嫌じゃないよ、ということから始めてみる、というやり方が紹介されています。

商売センスがない、というか、そういうのを意識して磨いてこなかったぼくには、ヒントになることがたくさんありました。