左脳思考と右脳思考。心をなくした「ビジネスモード」にGOOD BYE

本屋で内田和成さんの『右脳思考』という本を見かけて手に取った。



かつて、ロジカルシンキングに興味があってビジネス書を読みまくっていた頃、内田和成さんの『仮説思考』はぼくのバイブルの一つだった。

同じ著者が今は「右脳思考」を掲げていることに時代の流れを感じた。

パラパラと読んでみると、一見、当たり前のようなことがわかりやすく筋道立てて実用的に書かれているという印象。

プライベートでの右脳的な思考をビジネスに生かす、というような章が気になって読んでみた。プライベートでランチに何を食べるか、休日にどこへ行くかなどは、ロジックだけで決めるわけではない。過去に食べたメニューのデータベースをつくって、どの栄養素が不足しているから今日はこれを食べに行こう・・・なんていう意志決定プロセスをふつうはたどらないという(ロボットじゃあるまいし、そりゃそうだ)。どこへ遊びに行くかにしても、今日は美術館に行きたい気分やなぁ、と直感というか思いつきというか気分で思いつくところから始まる・・・というようなことが書かれていた。

まずは直感やひらめきや思いつき。そして論理的思考も混ぜて使っていく。日常では誰もがそういうような頭の使い方をしていると思う。

左脳か右脳、完全にどちらか一方だけ使うとか、論理思考だけとか直感だけとか、完全にどちらか一方だけ使い続けるというのは難しいだろうけど、人間は状況に応じて、習慣的に、あるいは反射的に、ある程度使い分けている。

ぼくは「ビジネス書おたく」を卒業してから、右脳か左脳か、とか、ロジカルシンキングだとかをほとんど意識しなくなった。だけど、自分の「気持ち」を把握することは大事にしたいと心掛けている。

「気持ち」が疎かになるのと、左脳偏重はほぼイコールだろうという気がする。自分がやりがいや意義を感じる、自分の自由な意志を働かせることができず、好きでもなく楽しくもなく重圧ばかりで他人の指揮下にあるような仕事を続けていると、自分の気持ちを押し殺さないとやっていられなくなる。自分の精神をまともに保つには自分の気持ちに鈍感になる必要がある状況というのも多いと思う。

世の中にはそんな仕事があふれ、自分の気持ちを押し殺して左脳偏重で何とか日々をサバイブしているうちに、プライベートでの頭の使い方とビジネスの場面での頭の使い方が全く違ってきて自由な発想がしづらくなったり、仕事の時間が多すぎるとプライベートでも自分の頭をフルに働かせることができなくなったり、というのは大いにあり得る話だろうと思う。

本屋のビジネス書コーナーに行くと、ロジカルシンキングや論理思考の本が山のようにある(一部には「右脳的」な本もあるけど)。しかし、ロジックだけでは新しいものは生まれないし、やりがいのある仕事ができるようにもならない。

最近ではAIがどうのと盛んに言われているし、これからは人間が自分の気持ちをフルに働かせながら、自分の気持ちにしたがってできる仕事の重要性がますます高まってくるだろうし、そういう仕事をしたい人が増えてくるだろうと思う。

家族や親しい友人・・相手は誰でもいいけど、自分が一番自分らしく、リラックスして、深く思考できて、自分の気持ちに正直でいられるような状態のままできる仕事をしていきたいなぁ、という気持ちが、ぼくの中でいつの頃からかあった。気持ちをOFFにした冷徹な「仕事モード」というのを自分の生活からなくせば、人間らしくいられる時間が増える。そういう時間が多いほうが、幸せな人生を送れるように思った。

どういう自分でいるのが心地いいか、自分がどういう「モード」でどういう日々を過ごしたいかは人それぞれだけど、望まない自分でい続けなければならない人が減れば減るほど、世の中はもっと居心地のいい場所になるように思う。


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by 硲 允(about me)