論理的思考(ロジカルシンキング)を鍛えるのに役立った本6選。最後はデカルトの「方法序説」

「ぼくよりもぼくのことを分かっているのではないか」というような気がした。大学生の頃に知り合った友だちだ。何か自分のことを質問されて答えると、その答えをもっとはっきりさせるために友だちは質問を重ねた。ぼくはそれによって、自分が何を考えているのか、もっと明確になった。

ぼくはその友だちと付き合っていくうちに、論理的に考えることの重要性を知った。自分のことを知るにも、他人のことを知るにも、何かある物事について知るにも、論理が通っていないと、何かを見過ごしたり、見誤ったりしやすい。

ぼくは昔から、自分の考えというものをあまり持っていなかった。どこまで考えれば、それが自分の考えといえるのか、あまりよくわからなかった。自分の考えを持とうという気持ちもあまりなかった。他人の言う通りにしたり、世間の価値観に流されたりするのは嫌いだが、自分の主張というものは特になかった。論理的思考を身につければ、自分の考えというものがもっとはっきりするような気がしていた。

当時、論理的思考に対して、一種の憧れのような気持ちを抱いていた。

「論理思考」「ロジカルシンキング」などという名の付く本や、それをテーマにした本を、片っ端から読んでいった。



考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

これは日本語訳がわかりづらいように思い、英語版(The Pyramid Principle: Logic in Writing and Thinking (Financial Times Series))で読んだ。ビジネスコンサルティングの世界では論理的思考が重視され、マッキンゼーの社員は、最初にこれを読んで勉強すると何かで読んだことがあった。ぼくが論理的思考を強化しようと熱中したのは、元マッキンゼー日本支社長の大前研一さんの本(ザ・プロフェッショナル)を読んだ影響も大きかった。それで一時期はビジネスのコンサルタントになりたいと思っていたくらいだった。


ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (照屋華子、岡田恵子)

この本はビジネスの文脈での例を取り上げて、論理的思考の基本を丁寧に解説している。


経営参謀が明かす論理思考と発想の技術 (後正武)

後正武さんの本は、レベルが高く、何回も読み返した。「発想」についても書かれているのがよかった。


世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく(渡辺健介)

こんな本を子どもの頃に読んでおきたかった! と思った。だから、当時アルバイトで教えていた塾で教材にした。


自分の答えのつくりかた―INDEPENDENT MIND(渡辺健介)

こちらは、その続編。渡辺健介さんの本は、あったかみがあって、読んでいてわくわくしてくる。スキルとしてのロジカルシンキングを教えるだけでなく、論理的思考ができるようになれば自分で考えることができ、そのほうが人生をよりよく生きることができる、というようなメッセージ(そう書かれているかどうかは覚えていませんが)を受け取った。


方法序説 (岩波文庫)(デカルト)

最後のほうでこの本を読み、ここに全部書かれているではないかと思った。マッキンゼーから広まった「MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)」、つまり、「漏れなくだぶりなく」という思考法もデカルトによって説明されている。

数年前から、論理思考への執着のようなものはなくなり、論理思考の能力を高めたいと思うこともほとんどなくなったが、一時期、熱中して論理思考の勉強をしたことはよかったと思う。論理思考は自分の思考を深めることや、他人の詭弁を見抜くことに役立つ。論理思考を学んでいる最中は、他人の論理の破綻が気になったが、この頃は、言葉の表面的な論理にとらわれることなくその言葉の裏にある心情を前よりも読み取れるようになってきたように思う。

論理は、思考を組み立てたり、物事を分析したりするのに役立つが、論理だけでは新しいものを創造していくことができない。創造には論理も役立つが、直感、ひらめき、心の衝動、価値観、想像力といったものが大きく関わってくる。人間の能力というのは多岐にわたる。時には部分的に鍛えることも必要かもしれないが、人生で何かを創造していくには、自分を総合的に成長させていくことが大事だと思う。


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by 硲 允(about me)
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