昨年の春に香川に来てから、いずれも5畝(約500㎡)くらいの田んぼと畑を借りて、野菜と米を育て始めました。
最初の1年は動力機械に頼らずに、スコップとのこぎり鎌だけで作業したので、1年中、草を刈りつづけているような生活でした。
とくに田んぼは、田植えをする前に草を刈っても刈っても伸びてきて、同じところを2回も3回も刈りました。
「そんなことしても無駄や! 刈ったそばから生えてくる!」と、近所の農家の方はすごい剣幕でしたが、そしたらまた刈ればいいやと思い、ぼくは毎日毎日、田んぼにしゃがんで草を刈りつづけました。
今年はエンジン式の草刈り機を使ったので、今振り返ると、よくあんなことができたなぁと思いますが、去年は毎日草を刈り続けていられることが喜びでした。
仕事の締め切りにも追われず、大きな心配事もなく、ただただ、田んぼの大地の上で草と向き合い、草を刈る。土や草の匂いに包まれ、鳥が鳴き、青空が広がる。平和そのものの暮らしでした。大げさではなく、死ぬ前にこんな暮らしができてよかったと、草を刈りながら思いました。
毎日草刈りを続けているうちに、肩の辺りがひんやりするような痛みに襲われて数日間草刈りができなくなったり、毎朝起きると手首が痺れていたり、平和なときばかりではなかったのですが、ひたすらに草と向き合い続けた1年間は貴重な時間でした。
先日観た自然農の映画で、川口由一さんが、どんな職業の人でも、青年期に一度は田畑に立つ経験をするといい、というようなことを仰っていました。何歳になってからでも遅過ぎるということはないと思いますが、ぼくは若いうちにこういう暮らしを経験してみて、今後の人生で、自然からかけ離れた暮らしはしたくないし、自然からかけ離れた暮らしには到底我慢のできない人間になったように思います。
【関連記事】
by 硲 允(about me)
twitter (@HazamaMakoto)
instagram(@makoto.hazama)