畑仕事で身についてきた能力について

東京から香川に移住して田畑を始めて今年で6年目。東京でも小さな畑で野菜を育てていたので、それを合わせると7年くらい。まだ7年ですが、畑仕事をしてきて思うのは、畑仕事には頭と身体の総合力が必要とされるということ。

畑仕事を始めるまではパソコン仕事ばかりしていましたが、デスクワークでは頭の一部しか使っていなかったことを思い知らされました。

まず、畑は「立体的」だという違いを最初に感じました(笑)。パソコン仕事は平面な画面でなんでもできてしまいますが、フィールドが立体となると、その時点で、頭の使い方がずいぶん違ってきます。

身体を動かしながら思考も使う、というのが初めはうまくいきませんでした。身体も鍛えてこなかったし、すぐに疲れて、頭も働かず…。記憶力も働かず、どこに何を植えたのかも覚えていない。段取りもできていない。計画もできていない…むちゃくちゃな状態で手当たり次第に作業をしていた、という感じですが、最近になってようやく、あの頃はむちゃくちゃだったなぁと、振り返る余裕ができてきました。

畑仕事で必要とされ、畑仕事によって鍛えられてきた能力にどんなものがあるだろうと考えてみると、記憶力、分析力、発想力、先を読む能力、優先順位付け、整理整頓・後片付け、実行力…カテゴリーはむちゃくちゃですが、今まで鍛える機会のなかった能力がいろいろ養われてきました。

記憶力については、どの時期に何を植えたらどうなったとか、どうすればうまくいったかとか、過去の事例を覚えておいた蓄積が後々に大いに役立ちます。全部記録しておくのは大変なので、頭の記憶が頼りになります。分析力は、そうした事例を読み解く力。たまたまうまくいったのを一般化すれば失敗するし、自分の体験以外に、本やインターネットなどからも情報収集して分析することが必要になります。

どこでいつ何を育てるか、何と何を一緒に育てるか、どんな順番で作業をするか…決まった答えがないので、発想力は常に必要とされます。ちょっとした思いつきによって、作業量がずいぶん軽減されることもあります。

香川に来て最初の年、半反の田んぼいっぱいに全部手作業で稲を育て、ずいぶん苦労しましたが、どうやって脱穀して籾摺りして食べるところまで行くか、という計画がなかったので、収穫した稲を玄関の間にしばらく積み上げたままで、その後もほとんど食べられず終まいで、今だに大事に保管されたままです。まったく先を読まないまま気力だけを頼りにぶつかっていった一年目でした…。

優先順位付け…これは苦手だったのですが、畑仕事のおかげでだいぶ鍛えられてきました。パソコン仕事の場合、やろうと思ったことはたいてい全部仕上げることができた気になっていましたが、自然相手の畑仕事では季節の流れにはさからえず、そのシーズン中にできることには限りがあります。もっと種を蒔きたいと思っていても、ある時期を過ぎたらもう諦めるしかありません。もちろんパソコン仕事でもそういうことはありますが、人間相手と違って、締切を延ばしてくれるように相談することもできないし、暖かくなって草がどんどん伸びだすと、ずっと追われているような感覚になります…。

整理整頓や後かたづけも、ちゃんと身につけずに来たのですが、これをちゃんとするのとしないのでは、畑仕事の効率が全く違ってくることを痛感しました。農具や資材、種の整理や片付け、作業予定の整理…これができていなければ、行き当たりばったりで、結局草ぼうぼうの畑の中で途方に暮れるしかないことがわかりました。

実行力…これは、成果が物体として実る畑仕事では、食べものが育ってなんぼ、口に入ってめでたし、めでたしなので、本ばかり読んで満足していたぼくには新しい領域で、取り入れたインプットを活かしてカタチにしていく能力も身についてきたように思います。

こう書いてみると、こういうのは子どもの頃、早いうちからちゃんと身につけておくべきもので、書きながら恥ずかしくなってきましたが、死ぬまでにはそういうことの大事さを知り、多少、身についてきたのでよかったとしましょう。めでたし、めでたし。


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by 硲 允(about me)