『ロックで独立する方法』(忌野清志郎 著)を読んで。

『ロックで独立する方法』(忌野清志郎 著)という本を読みました。



世間で生きていると、周りとある程度調和するために自分のあちこちを少しずつまるめていくものですが、角にヤスリをかけるように少しずつまるめていくと、気づいたらずいぶんまるくなっていて、かつての角ある姿を忘れそうになることがあります。

まるまる前の角を思い出させてくれるような一冊でした。

音楽業界の内部の実像が遠慮なく書かれていて、勉強になりました。ぼくはロックで独立しようとしているわけではありませんが、業界のことを知ると、ミュージシャンの見方も少し変わりそうです。プロダクションやレコード会社、いろんな関係者との関係の中にミュージシャンは在り、本人の希望や意向だけではどうにもならないことが多々あることがわかります。

忌野清志郎さんは元々所属していたプロダクションから独立され、独立したあとのツアーについてこう書かれています。
だから独立した後のツアーは、どんなにキツくても、独立前のツアーとは「疲れ」の質が全然違う。少なくとも、今ここでこうしてることに決めたのはオレ自身だ。疲れることに決めたのもオレ自身だ、って思えるからね。まずビジネスがあってそのために自分がいるんじゃなくて、自分がいるからこのビジネスが必要なんだ、とも思えるし。端から見れば似たり寄ったりにしか見えないかもしれないが、こっちから見れば、それは天と地くらい違うんだ。
(『ロックで独立する方法』忌野清志郎 著 文庫版 p. 221)

これはよくわかる感覚だと思いました。

ぼくもフリーランスになった後、同じように感じました。フリーランスになったばかりの頃は、すぐに仕事がなくて困り、学生の頃のようにアルバイトを掛け持ちしたり、単価の安い仕事をかき集めてなんとか暮らしていく時期が続きヒヤヒヤしていましたが、日々何をして何をしないか、すべて自分で決められるというのは、急に空が開けたかのように開放的な気分になれることで、久々に生きている感じがしたものです。

畑仕事にしても、自分で決めて自分の好きにやる分には、毎日朝から晩まで草刈りをしてほとんど収穫がない時期が続いても、大変な作業自体も喜びになりましたが、同じ作業をする場合でも、他人に雇われて朝から晩まで身体がしんどいときも働かされ、安月給で雇い主はラクしてお金を儲けている、というのでは辛いものがあります。

違う話に飛びますが、スランプがきても大丈夫なように、調子のいい時に曲をつくりためてストックしておくのがいい、という話にも付箋を貼りました。ぼくもこのブログは、その日に投稿をいつもその日に書いているわけではなく、書きためて予約投稿しています(常時10本くらい書き溜めておきたいのですが、油断するとすぐにストックが減っていきます)。時間に余裕がないときや、頭が疲れていたり、気分が乗らないときに書いてもロクなことがないので、畑仕事ができないので時間があり、心身が疲れていない雨の日に書き溜めることが多いです。

この本は読み始めると先が気になって、あっという間に読み終えました。社会にまるめこまれずにもっと自由に生きたい、という気持ちを奮い立たせたいという方にオススメの一冊です。


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by 硲 允(about me)