土が「疲れる」話。

土の研究をされている藤井一至さんの記事を読みました。

いまなぜ土が「アツい」のか 土壌学者が語る「土・貧困・未来」の深い関係(The Asahi Shimbun Blobe +)


その中で、土が「疲れる」という話をされています。

畑で作物を育てている方から、だんだん収量が落ちていく、という話を時々聞きます。作物を育てる過程で、作物が土の栄養を吸収し、土が痩せていく、疲れていく、というのが一般的な考え方なのだろうと思います。

たしかに、草を全部抜き取ってビニールマルチで畑を覆い、収量を優先して大きな作物を育てているような畑を見ると、土はいかにもボロボロで、人工的に投与する肥料が頼りで、土の生命力が感じられないことがよくあります。

藤井一至さんはこう語っています。

人間も、仕事にやりがいを感じて働いていたとしても、適度に休まないと、やりがいがあるっていう領域を超えてしまいますよね。土も同じで、養分を放出して植物に供給するというのは自然にもある働きですから、そのしくみをうまく利用している場合はいいんですけど、毎年働かせ続けるとなると休みがほしいということになるし、最後は働けなくなってしまうんです。

それに対する解決策として、不耕起農業を挙げ、「土を耕すと、有機物を含んだ部分が風で飛ばされたり、雨で流されたりしやすくなるので、耕すのをやめ、土を稲わらなどで覆って大事にしようというものです」と説明されています。

うちの畑も不耕起です。土が年々疲れているという感じは全くしません。手作業で少しずつ畝を増やしていったところ、最初の頃から使っている畝のほうがむしろ野菜がよく育ちます。

畑を耕して、雑草もすっかり取り除いてしまうと、耕したそのときは土がフカフカしているように見えても、土の粒子が細かく、均一になりすぎて、すぐにカチカチになってしまうようです。作物の成長を阻害しない程度に適度の草を生やしていると、草の根っこが土を耕してくれて、草を刈ればその根っこが栄養になったり、根っこを伸ばしていた場所が水や空気の通り道になるといいます。たしかに、不耕起で田畑を続けていると、畑の土がだんだん柔らかくなってきます。刈った草を畝の上に寝かしているので、それが虫や微生物たちによって分解され、土の養分になります。草は土の養分を吸収する一方ではなく、土に何らかの養分を与えているという話もあります。


藤井さんが永久凍土の調査をされているカナダ北部の地域では、しおれた白菜が1800円
の値段で売られていたそうです。農業に適した土がないと、そういうことになるようです。立派な白菜が数百円で買える今のうちに、土を守り育てる方向に舵をきりたいものです。


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by 硲 允(about me)