肉食をやめたいけれどやめられない場合、どうすればいいのか。



「お肉を食べない」という話をすると、自分もそうなりたい、という反応が返ってくることがあります。

多分、肉食は身体によくないと思っていたり、動物愛護の考えから菜食になりたいと思っていたりするのだと思いますが、努力してお肉は食べないぞ!と思っていても、いきなり完全に実行するのはなかなか難しいように思います。

ぼくの場合、最初の頃、一般的なお肉は遺伝子組み換えや農薬のリスクのある餌や、抗生物質の投与など、健康上のリスクがあることを知り、最初はそういうリスクの少ないお肉を食べるようになり、それまで食べていたお肉より安全で美味しいお肉が存在することを知りました。

相方が先にお肉を食べなくなり、自分だけ食べるのも料理が面倒になるし…というのもあって、大豆ミートを食べ始めたら、いつの間にか、久しぶりに食べるお肉の香りが気になるようになり(臭く感じるようになった)、動物のお肉より畑のお肉と言われる大豆のお肉もどきのほうが美味しく感じるようになりました。

その頃、有機栽培や自然栽培の野菜を食べるようにもなり、野菜本来の美味しさを知ったのも大きいと思います。野菜の風味をしっかり味わい、楽しむようになり、それと同じ感覚でお肉を楽しめるかというと、お肉を噛んでいて、違和感を感じるようになり、お肉は野菜のように幸せに味わえるものではないような気がしてきました。

野菜の場合、「これが誰々さんの育ててくれた聖護院大根かぁ~なんとも美味しい…ありがたや…」という感じですが、牛肉を食べながら、「これが誰々さんの牧場で育った牛が解体された背中の部分かぁ~なんとも美味しい…」とはならず、咀嚼しながらその詳細を思い描いて食欲が出るものではなくなり、いつしか、お店でお肉を見ても食べたいと思わなくなりました。

そういえば、ロシアのトルストイの作品で(どの作品かは忘れてしまいましたが)、食肉加工場で牛が解体される様子が詳細に描写されていて、それを読んでからしばらくは、お肉を美味しく食べられなくなったこともありました。お肉は子どもの頃から当たり前のように食べ、料理されたものを美味しく食べた記憶が積み重なっているので、美味しいようなイメージがありますが、戦前の日本にお肉が海外から入ってきた頃、日本の人々はお肉をすぐに好んで食べることはなかったといいます。そこで、すき焼きなど、濃い味付けの料理によって、お肉を美味しく食べる人が増えていったという話を聞いたことがあります。

野菜は自分で収穫して、ちぎったり切ったりして生で食べても美味しいと感じる人が多いと思いますが、お肉は自分で動物を殺して、解体して生で食べて美味しいと感じる人は少数派なのではないでしょうか。ところが、お肉は料理された途端に美味しいものに見える、というのは、いびつなものを感じます。そういうイメージに惑わされている、ということも多分にあるでしょう。

とはいえ、一旦お肉を美味しいものと信じたなら、それを頭で考えて払拭するのはそう簡単なことではありません。肉食を止めたいけれど止められない、という場合、いきなり止めようとするのではなく、食べたいときはなるべく自然な環境で育った動物のお肉をいただき、大豆ミートなどの代替肉を取り入れながら、有機栽培や自然栽培の野菜や豆や穀物を食卓にたくさん取り入れ、少しずつ移行していくことで、無理なく移行できるのではないかと思います。


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by 硲 允(about me)