閉店セール

時々買い物をするお気に入りの店が閉店セールをしていた。ショッピングモール内でも、閉店するお店が増えた。新型コロナの影響も大きいのだろう。残念で、気の毒である。お金の使用を以前よりも抑制している買い物客が増えているのだろう。適切なところにお金が流れていってほしいものだ。外を車で走ると、店の外装や看板がピカピカに塗り替えられているのをよく目にするようになった。使い切れない補助金がペンキに流れているのだろう。それもそれなりに必要な用途なのかもしれないが、もっと喫緊に必要としているところがあるように思えてならない。

閉店セール中のお店はたいてい、普段より客で賑わっている。普段なら入ってきそうに見えない感じの客も多い。今までそのお店に足を踏み入れたこともないのに、閉店セールだからといって見にくる客もいるのだろう。安くていいものないかなぁ、というところだろう。

ぼくも他人のことは言えない。普段はお店の隅々まで見ないのに、いつもより丁寧に見てまわった。しかし、普段の値段で買いたいと思っていなかったものは、セールで値段が安くなっているからといって買いたくなるわけではないことを改めて確認した。めちゃくちゃ気に入ったわけでもないのに、安くなっているから、お得だからといって買ったものは、それほど愛着がわかないことを多くの買い物から学んできた。そういうものは、結局、使わなくなったり、すぐに手放してしまうことになる。安物買いの銭失い、というやつだ。多少値段が高くても、自分が本当に気に入って、愛着を感じて長く一緒に暮らしていけるものを厳選したい。

店に行くといろんな買い物客の様子が嫌でも目に入ってくるわけだけど、商品ときちんと向き合う前に値段を見る客が多いように思う。それがほしいかどうか、買いたいかどうか、必要かどうか、の前に、いくらなのかが気になる。安かったら買いたくなる、というのはわかるが、安いからといってその商品そのものを気に入ったり必要になったりするわけではない。それが本当に気に入って、必要性もあって、買うことを本気で検討するまでは値段はどうでもいい気がするが、手頃な値段かどうか、安いかどうかがまず気になると、その商品自体としっかりと向き合いにくくなるように思う。自分の感覚やセンスも養われにくくなるのではないか。そんなことを言いつつ、自分もついつい、いきなり値段を確認したくなるのだけど、特に人間の手で丁寧につくられたようなものに対しては、まずは値段ではなくものそのものと丁寧に向き合うのが礼儀だと思う。

閉店セールの店を出たあと、無印良品へ行くと、母と娘に見える親子の母のほうが娘に対し、「必要じゃないものは買わんほうがいい」と話しているのが目に(耳に)入ってきた。閉店セールの店をうろうろしている買い物客の様子とは対照的にきりっとした様子で、これが正しい買い物の仕方のように思えた。