GI値(グリセミック・インデックス値)の話。

高校生の頃、GI値というものを気にしていた時期がある。

GI値のGIとは、グリセミック・インデックス。どういう食べ物が血糖値を上げるか、という指標らしい。糖尿病でもなかったのに、どういう経路でGI値に関心をもったのか覚えていない。当時、腰の不具合に悩んでいて、食べ過ぎるとお腹が張って腰の調子も連動してわるくなるので、お腹が出ないように気をつけていた。別に太ってお腹が出ていたわけではないと思うのだけど、勘違いしていたようだ。太らないように、GI値の高い食べものを避けていた。

精白した穀物は、GI値が高くなる。GI値が高い順に品目が並んだリストを見ると、白米も上位のほうにランクインしていた。GI値の高いものを食べるときは、食物繊維の多いものを一緒に食べると血糖値の上昇を抑えられると何かで読み、白米を炊くときは一緒に寒天を入れてたくといいらしいと知り、母親がお米を炊く時に棒寒天を一緒に入れてもらっていた。

いつの間にかGI値のことはあまり気にしなくなっていたが、たしかに、精白した穀物を一度にたくさん食べると血糖値が急激に上昇する、というのは体感的にわかる。ランチにうどんや精白したパスタを食べると、そのあとで眠くなる。全粒粉のパスタを食べて眠気に襲われた記憶はない。だからといって、うどんや精白したパスタを避けているわけではないけれど、毎日毎日、こういうものを食べていると体に負担がかかるだろうと思う。

東京で暮らしていたあるとき、糖尿病の方をあちこち案内したことがあった。その方は糖尿病で、砂糖を避けていた。コーラが好きなのに普通のコーラは飲めないので、Diet Cokeを店で注文しようとするが、たいていの店では用意していなかった。メニューの料理に砂糖が入っていないか確認してから注文していたが、帰ってから血糖値を測ったら異常に上がっていた、砂糖が入っていたに違いない、と言って怒っていた。その方は、砂糖は避けていたが、小麦は何も気にせずに食べているようだった。今思えば、砂糖が入っていなくても、外食すれば血糖値が上がる原因は山ほどあるだろう。外食で砂糖を避け、GI値の高いものを徹底して避けるのはかなり難しい。砂糖の入っていないメニューを探すだけでも苦労する。それでお腹いっぱいになり、栄養的にも満たされるメニューが用意されているお店は限られているだろう。

玄米や分つき米と、砂糖の入らない野菜や豆のおかず、味噌汁、ドリンクは緑茶やほうじ茶、といったメニューなら、血糖値が急激に上昇する心配はないだろう。しかし、こういう感じのメニューを提供しているお店でも、おかずに砂糖を使っていることが多い。

ぼくは動物関連のものは食べなくなったが、お肉中心のメニューだと、お肉料理と野菜少しと、白米や精白した小麦のパン、というようなことが多いと思うが、精白した米や小麦が血糖値を上げる。魚料理も、砂糖で煮付けていることが多い。甘いデザートには100%近く、砂糖が使われている。砂糖をはじめ、GI値の高い食品を避けながら外食でサバイヴするのは至難の業だ。糖尿病のその方を案内してまわるときも、お店を何軒もはしごし、食事にありつけるまで難儀した。そのうち、お腹が減りすぎてここでいいか、ということになるのだけど、何件もはしごした割に、なかなか満足のいくメニューは見当たらず、疲弊してしまう。

糖尿病になってしまったら、外食は大変に違いない。そもそも、糖尿病でなくても、血糖値が急激に上がる食事ばかりしかないというのは、未来の糖尿病患者を生み出す土壌ができていることでもあるのだろう。ぼくはあちこち健康を害して、今ではほとんど外食をしなくなったが、外食しまくりで、甘いおやつをだらだらと食べていたあの頃の食生活を続けていれば、遅からず糖尿病になっていたに違いない。体が教えてくれた。体の声をよく聞いていると、ストップをかけてくれていたはずだけど、聞く耳を持たなかった。いよいよ体が大声で叫び始めてようやくストップしたわけだけど、小声のうちに気づいておけばよかったと思うけれど、今さらそんなことを思っても遅い。生きている間に気づいただけまだよかった。

この頃は、砂糖は体によくない、という考えがちょっとずつ広がりつつあるように見える。大手メーカーの甘い飲料を見ても、砂糖不使用と書かれた商品をちらほら見かけるようになった。それで期待せずにラベルを見てみると、人工甘味料や人工的な添加物がいろいろ入っていることが多く、結局飲めないことが多いのだけど…。その横に海外の製品もあり、そっちは少し値段が高いけれど、砂糖も人工甘味料も添加物も入っていなかった、というケースもよくある。日本の大手食品メーカーの砂糖不使用や「自然派」商品は、今のところ中途半端なものが多いという印象が強い。コストを抑え、「いつもの味」になれた「消費者」の舌を満足させて「売れる」商品をつくるにはそうなるのだろうと想像するけれど、食べる(飲む)人の健康や安全を本気で考えた商品ももっと開発してくれたらいいのに、といつも残念に思う。安全な食についてよく調べている人は、中途半端に商品に手を出さない。お店の棚で売れ行きを見ていると、中途半端にこだわったなんちゃって商品は売れ残り、値段が高くてもちゃんとこだわった商品が売れていることもよくある。美味ければいい、安ければいい、という買い物客は、健康志向を謳った中途半端な商品に魅力を感じることはそれほど多くないのではないかと思う。どうせなら健康によさそうなもののほうがいいか、と思って買ってみることがあっても、美味しくなければ続かないだろうし、実は健康によくないものも混じっている、というのでは、期待が裏切られていることになる。

同じスーパーでも、店舗によって品揃えは違っている。今の家に引っ越してきた当初、近所のマルナカというスーパーで買いたい食材はほとんど見当たらなかったが、少しずつ、オーガニックのものが増えてきた。いつの間にか野菜売場に小さなオーガニックコーナーができた。オーガニックのアボカドやバナナやミックスナッツを時々買う。無農薬のにんじんジュースもあった。ところが、別のマルナカに行くと、オーガニックのものがほとんど見当たらない、ということがよくある。エリアによって、お客さんが買いたいものも違うのだろう。一度仕入れてみても、売れなければそのうち消えてしまうだろう。近所のマルナカは、オーガニックのものを積極的に置きたい仕入れ担当者がいるのかもしれないが、仕入れたものがちゃんと売れる、ということもあるのだろう。ぼくもこの夏はオーガニックのアボカドを積極的に買い支えた。農薬を使ったアボカドよりも少し値段が高く、買う人が少なければそのうち棚から消えてしまうかもしれないと思い、しょっちゅう通って買っていたが、案外人気のようで、最近は品切れ状態が続いている。少し高くてもオーガニックのほうがいい、というお客さんは意外と多かった。新型コロナの心配で、健康への気遣いを高めている人も増えているのかもしれない。

GI値の話から始まったが、この頃、アボカドに夢中になり、アボカドの話になると止まらない。

GI値のリストはもうあまり覚えていないが、穀物でGI値が比較的少ない食材に蕎麦があった。黒っぽい色の蕎麦なら心配は少ないだろう。ぼくが住む香川では白っぽい蕎麦を見かけることが多い。10割蕎麦でない限り、蕎麦には小麦粉などを混ぜるわけだけど、うどん県というくらいで、うどんを食べ慣れた香川県民は小麦粉の混合率が高い蕎麦を好むのだろうか? 先日、町内の産直に行くと、うどんほどの太さの白っぽい蕎麦が売っていてびっくりした。こんな蕎麦は他で見たことがない。蕎麦は放射性物質が移行しやすいらしく、産地や放射能検査の有無(結果)のわからないものは食べないようにしているので、その蕎麦は買わなかったが、美味しそうに見えた。香川で7年も暮らしていると、知らず知らずのうちにうどん県民になっているのだろうか。それにしても、うどん屋にももう久しく行っていない。