『エクセルギーハウスをつくろう』(黒岩哲彦 著)を読んで。

「エクセルギーハウス」というのは東京にいた頃から聞いたことがあり、気にはなっていたものの、なぜかもっと詳しく知るところまではなかなか進まなかったが、ようやく本を読んだ。『エクセルギーハウスをつくろう』(黒岩哲彦 著)という本である。



ある朝、白湯を読みながらなんとなく手に取り、読み始めたら、止まらなくなって、結局、朝飯前に最後までページをめくることとなった。

雨水を利用し、それを太陽熱であたためたり、蒸散作用で冷やしたりし、床下や壁面をめぐらして、室内を温めたり冷やしたりする。排水を植物や微生物によって浄化し、台所の排水が飲水になる! 浄化してくれる植物が食料にもなる。補助的にエアコンを設置することもあるが、太陽の熱、風、水など自然のエレメントとうまく付き合うことで、夏も冬も、ほとんどエアコンなしで快適に過ごせる。そんな家は空想の世界でしかないと思われていた頃もあるかもしれないが、そんな家が考案され、実現されている。

東京の小金井に、その実験的モデルの一つとして、「雨デモ風デモハウス」というのがあり、かつては見学ができたようだけど、行く機会を逃してしまった。その後、カフェになったようだけど、閉店しているようだ…今はどうなっているのだろう。ネットでちょっと調べてみると、全国いろんな場所にエクセルギーハウスができてきているようで、宿泊施設などもあるようなので、実際に訪れて体験してみたい。

最近、雨水が気になる。この本にも、雨水は急速ろ過の水道水よりも化学物質が少ない、という話があった。雨水を活用せず、水道水ばかり使っているのはもったいなすぎる気がする。雨水を無駄なく集めれば、雨が多い月は飲料水を全部雨水でまかなえるのではないだろうか。現代の一般的な家は、外部のシステムに頼らないと生きていけないようにつくられている。水は水道、ガスも遠くから引いてきたりプロパン、トイレは流してどこへやら、電気は電線を通って、これまた遠い国で掘られた化石燃料に頼って…。原子力発電も火力発電も、核の力や、石炭などを燃やした火力を用いて水を沸かしてタービンを回して電気を起こしているようだけど、そんな危険で大掛かりな仕組みをつくって水を沸かして水蒸気でタービンを回しているというのは、いかにも効率がわるいという感じがする。

太陽電池(太陽光発電)の場合、太陽のエネルギーが100あるとすれば、そのうち電気に変換できるのは20だという。太陽のエネルギーを熱に変換するのであれば、20%の変換率で電気にしてから熱に変えるのではなく、太陽熱温水器などで直接熱にしたほうが余程効率がいいらしい。太陽熱温水器だと、冬場はお風呂のお湯を沸かすにはお湯が十分熱くなりにくいという話も聞くが、壁面や床下をめぐらして室内を温めるには、冬場の温度で十分だという(寒すぎるときは、ペレットや薪を燃やした熱でタンクの水を温めることもできる)。

自分の家のキッチンから出た排水を、自分の庭の浄化システムを使って飲めるレベルまで浄化できるとは、最初聞いたときはにわかには信じられないほど意外な話だった。もちろん、合成洗剤などを使うのはNGである。自分の家での普段の暮らしを考えれば、台所からそんなに汚れた水は出ていない。野菜を洗ったときの泥、食器を洗った際のわずかな野菜カスや油。フライパンで炒めものをした後、野菜からでた水分が残っていれば水と味噌を足して味噌汁にすることが多い。食べ残しが出るようなことはまずない。たしかに、あっという間に浄化できそうな気がする。

本格的なエクセルギーハウスに住まなくても、すぐにでも実践できるようなことも書かれていた。エクセルギーハウスに住んでいる方が、冬に屋上で布団を干し、それをあたたかいうちに室内に取り込み、蓄熱した布団でじんわりと部屋を温めている、という話がでてきて、これなら誰でもすぐに真似できる。

自分の身近なところ、周りにあるものを活かしきらず、何でもお金で解決する習慣や態度、システムを改めて見直していこう。住まいに限ったことではない。いろんなインスピレーションがわいてきて、ワクワクしてくる本だった。