臼杵春芳さんの個展@うつわ楓へ。国産(香川県綾歌産)の漆の器など


2018年10月30日~12月2日に香川県丸亀市の「うつわ 楓」で開催されていた、臼杵春芳さんの個展に行ってきました。

森林活動の先輩に教えてもらって行ってきたのですが、こんな方が香川に!と、行ってびっくり。

臼杵さんは、香川県綾歌町のご自宅の裏山に300本の本漆を植樹され、約10年かけてご自分で育て、自分で漆掻きを行って木地も自分でつくって漆を塗っているという。この全工程を一人で行っているつくり手というのは、日本でも数少ないらしい(今まで他に聞いたことがありませんでした)。

日本で販売されている漆製品の漆のほとんどが外国産。展示会のときに読んで知ったのですが、文化庁が2015年に、寺社などの国宝や重要文化財の修繕には同年から国産の漆を原則として使用するよう各都道府県教育委員会に通知していたらしく、これは国内での漆の生産減少に歯止めをかけるのが狙いといわれています。

お店で見せてもらった冊子には、漆の生産地として有名な岩手県二戸市浄法寺町で漆の樹から専用の道具を漆を集める方法や様子が載っていて、気が遠くなりそうな作業でした。それを見ると、若い方も何人かこの仕事に就かれていて、すごいなぁと思いました。この仕事に惹かれたのだと思いますが、ずっと漆を掻き続ける人生を決意するのはなかなかの覚悟が必要だと思います。漆は早朝から掻くそうで、体力や根気の要る仕事です。漆一本はぼくには無理そうですが、自分が使う器の分くらい、生きている間に漆掻きをしてみたいと思いました。

漆の樹を植樹してから漆がとれるようになるまでに約10年かかるそうです。10年かかって育った樹からとれる漆の量は、器約10個分とのことで、1年で1個の計算! 漆が貴重なのがよくわかるお話でした。

漆を少しずつ掻いて漆の樹を生き長らえさせる方法も聞いたことがありますが、通常は、漆を掻いたらその樹は伐ってしまうそうです。臼杵さんは、その伐った漆の樹を木地に使われています。漆の樹は「暴れる」ので木地として使うのが難しいそうですが、それでも使おうとする心に感じるものがありました。

買うつもりで出かけたわけではなかったのですが、見てみると、どの作品も素晴らしくて、どれかを家で使いたくなって、ずいぶん迷いました。

漆の樹を木地に使っていて、香川産のご自分で育てられた漆を塗ってある作品がいいなぁと思って選んだのがこちら(香川以外の漆を使用している作品もあります)。


金継ぎしているのは、完成後に漆の樹が暴れたからでしょう。大胆でおおらかな、わが道をゆく美意識の追求…そんな感じを受けました。持ち上げてみると軽くてびっくり。工業製品とは違い、手で持ったときに何とも言えないものが伝わってきます。


内側が赤いお椀も購入。


うちの大胆野菜スープは、いかにもお正月という感じの漆椀には似合わなさそうですが、臼杵さんのお椀とは相性がよさそうです。


冷奴もこの器に乗せるといつもと違う風格に…。

材料となる漆から自分で育て、それを無駄なく使い切り、仕上がった美しい作品を見て触れて、ぼくもいいものがつくりたくなりました。ものを見てこれだけインスピレーションを受けるのは初めてかも… 個展はもう終わってしまいましたが(開催中にご紹介したかったのですが!)、臼杵さんの作品は、香川県丸亀市の「うつわ 楓」と京都市上京区のKit(キット)で常設、展示・販売されているようです。


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by 硲 允(about me)
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