雑誌『自然栽培』Vol.16を読んで。「種とり」の重要性を改めて

『自然栽培』という雑誌のVol.16を読んだ。今回は「タネ」特集。



『固定種野菜の種と育て方』という本を野口種苗の野口勲さんと共著で書かれている関野幸生さんの記事を読んで「タネとり」の重要性を改めて知らされた。

関野さんは、肥料や農薬を一切使わずに作物を育てているが、それができるのはご自分でタネをとっているからだという。

「結局はタネ次第。畑でもプランターでも同じです。プランターに生えた草は、放っておいても大きく育ちますよね。同じ場所で野菜が育たないなら、土ではなく、タネの生命力の差。土のつくりかたなんて人間にわかるわけがありません。草が生えるのだから野菜も育つはず。育たないのは、タネが弱いだけじゃないですか?」(p.20-21)

うちの田畑でもなるべく自家採種しており、たしかに、自分でタネとりして育てた野菜は力強く育つように思う。お米は毎年必ず種(籾)をとっておいて、それを翌年種蒔きして育てる。「種蒔く旅人」さんからハッピーヒルというお米の種を送っていただいて育て始めた1年目は、白穂(実が実らず、穂が白くなる)がたくさんできたり、穂がいつまで経っても垂れなかったりしたが、今年は白穂はほとんど見当たらないし、病気にもならず、虫害にも悩まされず、台風でもびくともしなかった。うちの田んぼには全く水を引いておらず(隣の田んぼから染み出てくる程度)、最初の年は稲もどうなってるんだとびっくりしたに違いない。それが5年も連続で水が来ないもんだから、どうやらここでは水をたくさんもらえないらしいとわかってくれたようで、そういう環境に応じて育つようになってきてくれているように見える。

お米の種とりといっても、籾すりする前の籾をそのまま保管しておくだけなので簡単だが、野菜の場合はもう少し手間がかかることが多いので種をとりそびれることも多いけれど、もっとちゃんと計画的に種をとり継いでいこうと改めて思った。

埼玉県秩父市にあるイタリアンレストラン「SALVAGE(サルベージ)」のオーナーシェフ、坪内浩さんの記事も面白かった。

坪内さんはレストランで使うすべての野菜を自分の畑で育てていて、秩父の在来種を優先して年間150種類くらいを育てているという。それだけの種類の野菜を育てながらレストランのシェフもされているというのは驚き。農作業は自然の摂理に沿った効率化を実践されているとのことで、たとえば畝の幅を最初から機械の幅に合わせて設定したり、完熟発酵させた育苗土にビニールシートをかぶせて太陽熱で雑草を防除したり、といった工夫をされているらしい。

年間を通してレストランで必要な野菜をすべて自給するというのは簡単なことではないと思うが、3年ほどはじっくりとタネと向き合い、その間は収穫量を減らしてでも仮説と実験を繰り返し、品種ごとにタネや作物の特徴を深く観察したことで、それを可能とする作付け方法を生み出したという。

ぼくも年間を通して自分のところで食べる野菜を全部育てられるくらいになりたいと思っていて、来年からはもっと気合いを入れて畑仕事をがんばろうと思っている。そういうやる気をさらに高めてくれる一冊だった。


【関連記事】

by 硲 允(about me)
twitter (@HazamaMakoto