ゴッキーさんはタマネギの皮が好き、は本当だった。日常のひとこま

ピーナッツをポリポリと食べていると、足元にゴッキーさんが現れた。

「おお、今食べてるとこやから、向こう行っといてよ」

床に落としたピーナッツの殻を食べに来たのだろうか。「あんた、そんなのも食べるんかい?」と相方がたずねる。

なかなか離れようとせず、むしろ近づいて来て、黒いきれいな触覚が足に触れようとしたところで、ぼくの方が移動した。

「タマネギの皮が好きっていうけどなぁ」と相方。

「あっ、タマネギの皮あった!」

台所に落ちていたタマネギの皮を踏んでいつの間にか足の裏に付いていたようだった。

ゴッキーさんがこんなに近づいてくることは珍しいので、どうやらタマネギの皮が好きというのは本当らしい。

あまり近づいて来られる困るので、床をポンポンと叩いてゴッキーさんを追い払うと、テーブルの足の下の隙間に隠れた。

スープが沸き、お椀によそって食べ始めたが、ゴッキーさんの様子が気になるので、外に出すことにした。ほうきを取ってくる。

「はい、お外へ行ってよ。美味しい食べもんいっぱいあるで。タマネギの皮とか」

窓の方に向かってほうきで誘導し、窓をあけると自分で外に出ていった。

「お利口さん」と相方。

聞き分けのいいゴッキーさんだった。タマネギの皮は庭に落ちてそうにないが(ウソを付いてちょっとわるかったなぁとも思ったが、ちゃんと見抜いていたようにも思う)、家の中よりも食べものはいろいろあるだろう。

ゴッキーさんは昔から汚いものだと思っていたが、よく見るとその身体はピカピカでキレイ好きのようにも見える(ハエも汚いもの扱いされがちだが、よく観察していると、汚いものをさわった後は神経質すぎるくらいに思えるくらいに手足をこすり合わせるようにしてきれいにしている姿を見かける)。ゴキブリやハエは、それ自体が汚いというよりも、汚くしている場所を掃除しに来てくれるのだろう。ゴミを持って行ってもらう必要があるからゴミ収集車が来てくれるが、ゴミ収集車自体が汚そうだからといって追い払ってしまうことはない。だけどゴッキーさんやハエたちは、汚いもの扱いされてつぶされたり追い払われたりする。

ゴミ収集車の不要な暮らしはなかなか難しいけれど、ゴッキーさんのお世話にならなくて済むように、タマネギの皮は見つけたらすぐ片づけようと思った。



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by 硲 允(about me)
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