ある日、ショッピングモールへ買い物に行くと、店内の出入り口付近に設置されたベンチに腰掛けて、うつむき加減でハーモニカを加えている人を見かけた。膝の上には、島村楽器のオレンジ色のビニール袋が乗っている。そうか、今買ってきたばかりのハーモニカを、今に帰るまで待ちきれなくて吹いてみているんだ！ 他の買い物客の迷惑にならないように、そっと吹いている様子がなんだかよかった。
待ちきれない子どもはよく見かけるが、待ちきれない大人もいいなぁと思った。何歳になっても楽しみで待ちきれないことがあるのはいいなぁと思う。何を吹くんだろうと想像した。ブルースか、動揺か、ボブ・ディランか…。
楽しそうに何かをしている人を見ると、自分もやってみたくなる。頑張って他人や社会のために働いたり奉仕するだけが「社会貢献」ではない。楽しいことをして、楽しい姿を見せて、誰かを楽しませてやる気にさせるのも大事な社会貢献だと思う。本気で楽しんで何かに取り組んでいる姿は、他の誰かをやる気にさせる効力をもつ。
引き出しから眠ったままのブルースハープを引っ張り出したくなった。
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