パンの話


なんと美しい食パンでしょう。

広島県世羅町の「おへそカフェ&ベーカリー」のパンです。香川では、高松の自然食品店「ちろりん村」で買えます。

この食パン、材料は熊本産の小麦粉、広島産の全粒粉、オーストラリア産の天日塩のみ、というシンプルさ。それでいてこの膨らみ、もっちり感、さすがはプロの技、という感じです。焼き直さずにそのまま食べても美味しいですが、鉄のフライパンで焼くと、また違った美味しさになります。外はカリッ、中はもっちり、という感じで中身がぎゅっと詰まっているので、ひと切れの満足感がすごい。安い添加物だらけの食パンと同じ感覚で食べたら大変なことになります。食パンひと切れでこんな満足感があったとは、という驚きがあります。

熊本産や広島産の小麦粉を使っているのもうれしいところです。生産地ならではの食材を使ったものが食べたいものです。大手のお店やチェーン店に行くといろんなパンが並んでいますが、地元の小麦を使ったパンはめったにありません。香川ではさぬきの夢という小麦が育てられていますが、それを使ったパンはほとんど見かけないし、さぬきうどんですら、海外産の小麦が主です(ちなみに、さぬきの夢を使ったうどん店が、県のサイトでまとめられています)。

本物のパンを知ると、スカスカのパンには戻れなくなりました。安い、人工的な材料でごまかしたパンの値段に慣れていると、小麦にこだわり、天然酵母で焼いたようなパンの値段に最初は戸惑うものですが、食べてみると、中身の詰まり具合が全く違うことがすぐにわかります。人工的な材料で安易に膨らませたスカスカの大きいパンと、天然酵母でじっくり時間をかけて焼いた中身の詰まった小ぶりのパンを、外見のサイズと値段だけで比較するのはフェアではないでしょう。とはいえ、好みの問題もあるので、天然酵母のハード系のパンを食べて、なんだこのかたいパンは!歯が折れそうになったじゃないか!などと怒ってくる人がいるという話も時々見聞きしますが…。フランス人からすれば、日本のふわふわ、スカスカのパンはパンじゃない、という話も聞きますが、日本人には、ふわふわのパンがパンだというイメージが未だに強いのでしょう。最初はハード系のパンが多かったパン屋さんでも、だんだん柔らかくて甘いパンが増えていくケースをよく目にします(よく売れるのは柔らかくて甘いパンなのでしょう)。とはいえ、この頃は本格的なパンを焼くパン屋さんが増えてきたように見えるのはうれしいことです。パンの話を書いていると、美味しいパンが食べたくなってきました。いつか庭にパン窯をつくりたいなぁ…。