イオンの動画広告を見て。世間一般とは異なる価値観やライフスタイルを提示するには

近所のイオンのレジ横にある動画広告で、抗生物質などを使っていない鶏肉を宣伝していて、鶏肉料理を出すのがお母さんだけではなく白髪のおじいさんもアウトドア料理を出していた、と相方から聞いた。

イオンはおそらく、海外の大手ショッピングモールの動向も追っていて、健康や倫理、社会的責任の方面で進んだところがあると、買い物をしていて感じる。オーガニックの農作物も増えてきて、オーガニックの自社農園もあるらしい。

ジェンダーの方面も世界の動向を研究されているのだろう。男女平等、男女同権への動きは世界で急速に進んでいるように見えるが(LGBTQといった概念が一般的になり、「男」と「女」という区分けが時代遅れになりつつある)、日本では古き悪しき男尊女卑の考え方や価値観が根強く、家庭や社会での役割においても古くからの固定観念が依然として強く残っている。

鶏肉料理を出す動画広告において、家で誰が料理をつくって出すことにするか。ひと昔前なら、何の検討もなく「お母さん」が料理する設定にしただろうけれど、今の時代、遅れた日本でも配慮が求められる。とはいえ、「お父さん」が日常的に料理をする家庭は少数派であり、この動画において「お父さん」が家で鶏肉料理を出す姿に違和感を覚えるお客は多いだろう。そこで、アウトドアの1シーンを取り入れ、白髪の(おそらく)「おじいさん」を登場させ、少しバランスをとろうと試みたのではないかと推測した。アウトドアのシーンなら、男性が料理をしても違和感を覚えるお客が少ないのではないかと思う。そこまで考慮したのかどうかはわからないが、そんな気がした。

世間で一般的なものと異なる価値観やライフスタイルを提示するには、それなりの配慮と計算が必要になる。

仮にどこかのショッピングモールが、「自分たちは先進的なんだ!」ということをアピールしようとして、たとえば家で男性が家事をしている動画を流せば、反感を買うこともあるだろう。反感を買われてお客が減る可能性もある。そういうリスクを減らしつつ、「こういうのもありですかな」という程度でそっと新しさを提示していけば、「そういうのもいいな」と感じた人はそっと取り入れるだろうし、従来の価値観を死守したい人たちによる反撃をくらうことも滅多にないだろう。

反対に、何でもダイレクトに表現し、傷だらけになりながら訴えていく、というのもありだが、穏和なやり方もある。ぼくは打たれ強いほうではないので、後者の方法でなければ続かない。


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by 硲 允(about me)
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