子どもの頃の夢 ―「将来、何になりたいか?」


小学生の頃、学校で将来の夢を書かされることがあって、けっこう困りました。

将来の夢、というか、職業です。「何になりたいか?」という。ぼくは何になりたい、というのが特になく、書いた通りにならなければいけないわけでもなく将来チェックされるわけでもないので、てきとうに「学校の先生」と書いた記憶があります。将来の職業というと、多数が就く会社員という選択肢も浮かびましたが、会社員よりは学校の先生のほうがいいかなぁと思いましたが、書きながらやっぱりあまり魅力を感じないなぁと思ったものです。

ちなみにぼくはその後、高校生の頃に英語が好きになり、英語を一生勉強し続けられる仕事に就きたいと思って大学の教授という選択肢が出てきたり、通訳者になることを目指していた時期もありますが、紆余曲折あって、今では先生でもなく、会社員でもなく、通訳者でもなく、特に肩書きもなく雑多にあれこれしている人間になっています。そんなふうに暮らしていけるとは思っていませんでしたし、そんな選択肢があることも知りませんでしたが、気が進まないことはなるべくせず、なるべく自分が好きで、興味があって、意義を感じることだけをして生活していくにはどうすればいいかを考え、実行してきた結果、今の自分があります。10年後、20年後にどうなっているかは自分でもわかりませんが、その時々の自分の気持ちに導かれていくのみです。

子どもの頃に、将来の夢やなりたい職業をきかれても困る人はけっこういるのではないかと思います。仕事や職業、どんな暮らしがあり得るか、というのは、家族や親戚、周りの大人などの身近な例を見たり、テレビなどのメディアで知ったりして、その中から自分にとって魅力的と思うものを選ぶことに普通はなるのだと思いますが、そうやって得られる情報からの選択肢が少なすぎるのが問題だと思います。それに、世間の固定観念もあります。男はこういうのがかっこいい、女はこういうのが理想…とか。それも時代によって変化していくものだし、たまたまその時代の流行が自分に合っているとも限りません。

子どもの周りにいる大人たちは、子どもたちにいろんな例を示していくのは大事な役割だろうと思います。

最近、このブログでよく紹介している「The Lifestyle MUSEUM」というTokyo fmのラジオ番組を聴いていて(Podcastでオンラインでも聴けます)、これは職業図鑑でもあるなぁとよく思います。文房具にめちゃくちゃ詳しくてそれを仕事にしている方、家電が好きで昔の家電をいろいろ集めて修理して販売したりドラマなどのために貸し出したりしている方、居酒屋が好きで全国あちこちの居酒屋を巡って本などで紹介している方…それぞれの興味や好きなことを徹底的に追求して、いつのまにかそれが仕事になった、という方がたくさん登場し、何でも突き詰めれば仕事になるんだなぁとしみじみ思います。こういう番組を子どもの頃に聴いていたら、世界観や職業観が広がったり、自分の好きなことを仕事にしていく発想が生まれたりするのではないかと思います。ぼくもこの番組を20回分くらい聴いてから「何になりたいですか?」の質問に答えさせられたら、てきとうに「学校の先生」とは書かなかったかもしれません。


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by 硲 允(about me)