「絵本むかし話ですよ 弐」(五味太郎 著)を読んで。

五味太郎さんの「絵本むかし話ですよ 弐」という本を読んだ。


「むかし話」というと、子どもに対する教訓的なものがたいてい含まれているものだと思うけれど、この本は、そういう教訓めいたものに真っ向から反旗を翻しているように感じた。それが小気味好い。

うさぎのカメのかけっこなんて、タヌキまでやってきて、どういうレースにしようかと話し合う。カメは、

「いや、民衆教育のためのヤラセレースにはいろんなパターンはあるなってことでさ」

なんて話す。

うさぎとカメのレースの話の裏側を見せられているような気になる。

あまり従順すぎるタイプの子どもは、普通のむかし話に加えて、この五味太郎さん流のむかし話も読むとバランスがとれるのではないかと思った。ぼくもどちらかというと従順すぎる子どもだったので、こういう本も読んでおけたらよかった。

大人が子どもを教え導くべきだ、という図式は嫌いだ。絶対的な正解なるものを他人に押し付けようとする教育的・教訓的なものにも反発を感じることが多い。自分はこう思う、これがいい、これが好き、こうしたい、というのははっきりさせて、それを明言するのはいいことだと思うけれど、他人にも同じようにさせたり同じように考えさせたり感じさせたりしようとすると、おかしなことになる。

面白おかしく読みながら、「表現」というものについて改めて考えさせられる一冊だった。


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by 硲 允(about me)